264話・性別
「…ノーリ君はどう思う?」
「ぼ… 僕ですか?」
聞きに徹していた僕に、グラディウスさんは、急に話をふってきた。
「えぇ、そうよ。何か裏があるとは思わない?」
「えっと、その…」
僕は、咄嗟に思い付いた言葉を述べる。
「裏があるとかないとか、この際一旦置いておいていいんじゃないでしょうか?」
「それは、どういう事?」
「えっと、上手くは言えないんですが、その人が仮に、エルマーナ様が言った通り、善意で治してくれたのなら、それを何かしら裏があると深読みし、僕たちが何かを考えた所で意味がないんじゃないかなって思います。」
まぁ実際、エルマーナ様に言った通りだから、本当に意味がないんだけどね。
「だからその、そこまで深読みせずに、今回は、エルマーナ様が治って良かったくらいでいいんじゃないでしょうか?」
だから、色々バレてしまう前に、もうこの話はここで終わっていいんじゃないかと思いながら、そう言ってみる。
「なる程ね。確かに、ノーリ君の言う通り、私たちがあれこれ考えても無駄かもしれないわね。」
「それもそうね。そう言われてみると、考えるだけ無駄なような気もしてきたわね。」
グラディウスさんだけでなく、ナニーさんも同調してくれる。
内心、握りこぶしを作りながら、ホッとする。
「あ、えっちゃんは、どう思う?」
「わ… 私ですか?」
「だって、その人に会ったのはえっちゃんでしょ? えっちゃんからみて、その人はどうだったの?」
「それもそうね。エル、どうだったの?」
2人からそう尋ねられたエルマーナ様は、
「えっと… 特に悪い感じはしませんでしたし、私には、嘘をついているようにも見えませんでした。」
そう答えた。
「そう。なら、ノーリ君の言う通り、これ以上考えるのは止めましょうか。」
そうグラディウスさんが、言ったので、もうこれ以上昨日の話はないなと思っていたのだが、
「それで、エル。その人はどんな人だったの?」
今度は、人物像の話になった。
そう言えば、先程のエルマーナ様の話では、謎の人物としか言ってなかったから、気になったのだろう。
「えっと… すみません。顔を隠されていたので、どんな人かまでは…」
「まぁ、そうよね。性別はどう?」
「…たぶんですけど、男性だったような気がします。」
「男性ねぇ…」
グラディウスさんの視線がチラッと僕の方をむいたような気がするが、そこは気づかないふりをしておく。
「なら、他にその人の事で何か気づいた事はある?」
「…突然の事でしたので、それ以外は特に…」
男性であること以外は、特にバレていないようで、安堵する。




