258話・和気藹々
ナニーさんの提案に、グラディウスさんやエルマーナ様が賛成した。
「なら、私は先に行って準備をしてきます」
「そうね。お願い、アリー」
「はい。では、失礼します」
扉近くで、1人黙ってその様子を伺っていた僕にも一礼し、アリーさんは先に部屋を出て、準備しにむかった。
僕は、そろそろ声をかけていいのかなと思い、口を開く前に、
「待たせてごめんなさい、ノーリ君。もしかして、私の叫び声で起こしてしまった?」
先に、グラディウスさんが声をかけてくれた。
「あ、いえ…」
まぁ、その通りなんだけど、正直に答える必要もない為、
「それより、エルマーナ様が目覚められたんですね。良かったです」
話を変える。
「そうなの!! それで、聞こえていたと思うけど、後でエルから話を聞くんだけど、ノーリ君は、何か知らない?」
何か勘ぐっているのか、グラディウスさんは、僕にそう聞いてきた。
「僕ですか? すみません。昨日はすぐに寝てしまったので、何も…」
だけど、それを聞かれる事は予想していたので、予め考えていた答えを、しっかりとグラディウスさんの目を見て返答する。
「そうなのね」
「はい、すみません」
軽く頭を下げておく。
「頭を上げて、ノーリ君。別に責めてる訳じゃないから、気にしないで」
「はい、分かりました」
頭をあげると、グラディウスさんの胸の中にいるエルマーナ様が、僕の事をジィーと凝視していた。
どうして、そこまで見てくるのかと直接尋ねてみてもいいものかと迷っていると、
「エル。ノーリ君をそんなに見つめてどうかしたの?」
グラディウスさんが、聞いてくれた。
「あ、いえ別に…」
「そう? あぁ、エル。この人は…」
グラディウスさんが、エルマーナ様に僕の事を紹介しようとした所で、
「ぐーちゃん。朝食の準備もすぐに出来ると思うから、紹介は、朝食の時でいいんじゃない?」
ナニーさんから待ったがかかった。
「それも、そうですね。あまり時間をかけるとまたエルのお腹から悲鳴が上がるかもしれませんしね」
少し笑いながらグラディウスさんがそう答えると、
「ちょ、お姉様!!」
慌てた様子でエルマーナ様が大きな声を出しながら、ポカポカとグラディウスさんを叩き出した。
「ちょ、エル。謝るから、そんなに叩かないで!!」
和気藹々な雰囲気が流れる。
「ほらほら、2人とも、そこら辺にして、顔を洗いに行きましょう。ノーリ君も、起きたばかりなら、一緒に行きましょうか」
「「はい」」
「あ、はい」
ナニーさんの言った通りに、紹介は後にし、先に4人で顔を洗いに行く。




