252話・なぜ嘘を
あの人がいなかったと聞いた時は、確かに落ち込みかけたが、ラウムのある行動をみて、何とか思い止まった。
ラウム自身が気付いているかどうかは分からないが、ラウムのまばたきの回数が普段より多くなっている時は、嘘をついている証拠だからだ。
でも、ラウムが嘘をついていると分かっても、それがどんな嘘なのかは分からない。
それに、どうしてこのタイミングで私に嘘をつくのかも分からない。
だけど、嘘をつく理由は、今考えれるものだと、転移した先で何かあったくらいしか思いつかない。
「だけど、その何かが分からないのよね…」
私は、ボソッとそう言いながら、隣で寝ているラウムを見る。
目が闇になれたのか、スヤスヤ寝ているラウムの顔がはっきりと見えてくる。
ふとその顔を見るのも懐かしく感じながら、それと同時に改めてラウムの性格を思い出し、その何かを考えてみる。
「う~ん… ラウムって、可愛らしい見た目の割に、かなり律儀な性格だから、あの人に黙っててと言われたから、嘘をついたとか?」
一番始めに思い浮かんだのが、そんな考えだった。
それだと、ラウムが起きた時に、転移先で本当は何があったのかを聞くのが躊躇われる。
だけど、
「いくら私を助けてくれたといっても、それだけで、ラウムが見ず知らずの人をそこまで信用して、正体を黙っているものなのかな?」
とすぐにそれを否定する考えが浮かぶ。
まぁ、どんな理由にしろ、ラウムにもラウムなりの考えがあるんだろうから、かなり気にはなるが、ラウムが教えてくれるまで、待つ事にした。
だから、考えるのはここまでにして、
「おやすみなさい、ラウム」
もう一度ラウムに、寝る前の挨拶をしてから横になり、眠りについた。
◆
「~~~~~~~!!」
「何だ!!」
誰かの悲鳴のような声で、飛び起きる。
辺りを見渡すが、この部屋にその声の主がいる訳ではないようだ。
正直言って、まだまだ眠かったのだが、あの声がなんだったのか、誰が声を出しているのかなど、気になってしまったので、ベッドから抜け出し、大きな欠伸をしながら、徐々に騒がしくなりだしている扉の外へとむかう。
◆
今日の朝も、いつもと何ら変わりない目覚めだった。
起きてすぐ、そのまま少しボーとしながら、今日の予定を考える。
あらかたやる事を考え終わる頃には、しっかり意識も覚醒している為、体をグッと伸ばしてから、顔を洗いにむかう。
洗い終わる頃には、早起きして朝食の準備を終わらせたナニーさんが呼びに来てくれたので、朝の挨拶を済ませてから、ナニーさんの代わりに、ノーリ君たちを起こしにむかった。