250話・安心
「評価が上がって悪い事はないと思うけど?」
僕が言ったことに対し、ラウムさんは、不思議そうに、そう聞いてきた。
確かに、普通なら評価が上がる事は、悪い事ではないと思う。
だけど、僕は違う。
「それなんですが…」
僕は、その理由について簡単に説明する。
「…と言う事は、ノーリは、最近実力をつけてきたから、評価が上がる事によって、変な輩に絡まれるのをさけたいと?」
「はい、そうです。」
「なる程ね。だから、誰にもバレないように、エルを治しにきたのね… でも、本当に良かったの?」
「何がですか?」
「だって、エリクサーって、かなり高価な物なんでしょ? それを何の見返りもなく使ってしまって本当に良かったの?」
「あぁ、その事ですか。あの部屋にいたのなら聞いていたと思いますが、本当に、ただエルマーナ様を助けたかっただけなので、構いませんよ。」
それに、必要になった時は、また創ればいいだけだしね。
「そう… ノーリがそう言うんなら、私からもう言う事はないわ。それじゃあ、聞きたい事も聞けたし、エルを待たせているから、そろそろ戻るわね。」
「そうですか、分かりました。気を付けて下さいね。」
「分かったわ。でもまぁ、隣だから気を付けるも何もないけどね。」
「そう言えば、そうでしたね。」
「えぇ、そうよ。じゃあ、寝ている所起こして悪かったわね。」
「いえ、僕も精霊と話が出来て良かったですから、気にしないで下さい。」
「そう言って貰えると助かるわ。この後は、ゆっくりと休んで頂戴。」
「はい、そうさせて貰います。」
「それじゃあ、おやすみ、ノーリ。」
「おやすみなさい、ラウムさん。」
ラウムさんは、そう言った後、音もなく消えていった。
「!?」
てっきり、扉から出ていくものと思っていたので、普通に驚いてしまう。
「転移結晶? いや、そんな物を持ってるようには見えなかったよな… なら、もしかして転移?」
確か、そういう魔法があるとは読んだ事があるが、かなり珍しいものだった筈だ。
その後、ラウムさんが持ってきてくれたであろう僕のランプを回収し、ベッドに横になるが、ラウムさんが何の精霊なのか考えてしまった為か、寝るのがもう少しだけ遅くなった。
◆
ノーリの話を聞き、エルの部屋へと戻ってくる。
「戻ったわ、エル。」
エルに声をかけるが、返事はなかった。
私は、慌ててベッドに駆け寄ると、ベッドの上で、気持ち良さそうに寝ていた。
「エル?」
その顔を見て、少しは安心したが、もしもという事もあるので、肩を揺すりながら声をかける。
「んん… あ、ラウム、おかえりなさい。」
「ただいま、エル。」
ちゃんと起きた事にホッとしながら、エルの言葉に返事をする。