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閑話・ラウム 7

 長い眠りから目覚めたエルが起きてすぐ物音をたてたノーリに気づいてしまった。

 そのせいで、ここで私が姿を現して話をややこしくする訳にもいかず、お礼を伝えるタイミングを逃した私は、どうなるのかを見守る事にした。

 だけど、やはり顔を隠した相手を不振がっているのか、エルからはノーリの事を警戒している様子が伺える。

 だから私は、少し手を貸す事にした。

 契約した事で使えるようになったエルとの念話を使用し、目の前の相手がエルの事を治してくれた事を教えて上げる。

 エルは、驚きながらもすぐにその事をノーリに確認し出した。言った事を全て鵜呑みにするのではなくちゃんと他の人に確認するのはいい事だと思うけど、急にそんな事聞いても少し不振がられるのではと気になったが、ノーリは、特に不振がる事なく普通に答えた。

 私が気にしすぎなのかなと思ったが、答えてすぐ動揺したのを見ると、あれはどう見ても、エルの勢いに押されて答えてしまっただけのようだった。

 そんな事を考えている内に、エルは気になる事を尋ね、ノーリも正体を隠している割に、律儀に質問に答えて出し始めた。

 それを見て、なんと言うか、今まで見てきた人族の印象とかけ離れ過ぎて、警戒していた私が馬鹿みたいと思うと同時に、グラディウスが、期待していると言ってた意味が少しだけ分かったような気がしてきた。

 そして、見返りを求める訳でもなく、エルの事をただ本当に助けたかったからとノーリが言ったこの瞬間に、ほんの少しだけ残っていたノーリに対する警戒心が完全に無くなった。



 ◆



 ノーリが帰るのを見送ったエルが、私の方へと向き直る。


「改めておはようございます、ラウム… ズズッ こんな私の傍にいてくれて… 本当にありがとう…」


 エルは、私の手をとり、目に涙を貯めながらそう言ってきた。


「おはよう、寝坊助のエル。そんなの今更じゃない… だから、気にしないで…」


 こうして久々に、エルと向き直って会話をしたせいか、はたまた泣いている人を目の前に、それを貰ってしまった、それとも、その両方のせいなのか、我慢できずに、少し温かい物が私の頬を伝っていくのを感じた。

 そして、少しの間、私たちは、なにも言わずただ抱き合いながら泣いた。



 ◆



 耳元で泣いていたエルの声が徐々に静かになっていく。


「エル?」


 私は、エルから体を離し様子を確認する。


「あ、ごめんなさい、ラウム… あんなに寝てたのに、エルの顔を見たら、何だか安心して眠くなってきました…」


「そっか… その、大丈夫なの?」


 もしかして、まだ完全に治りきっていないのではと思い、そう聞いてしまう。

作者より(捕捉)


 ラウムは、エリクサーを探す為に、人族と関わる事で、少し人間不信になっていたので、エルが治った後も、ノーリの事を少しだけ警戒していました。

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