閑話・ラウム 5
何の目的でエルの部屋にやって来たのかを探る為に、このまま息を潜めたまま、ノーリを観察してみる事にした。
そして、ないとは思うが、観察してみて、少しでもエルに危害を加えるというのなら、グラディウスには悪いが、私は躊躇わずにノーリに攻撃を仕掛けようと思う。
とりあえず、邪魔にならない部屋の角へと移動し、座り込みながら、ノーリをジッと観察する。
「気のせいだったかな… まぁいいや、それにしても、さっきは油断したな。椅子があるのを忘れてたなんて… 次は気を付けないとな。」
私から見られている事に気づいている様子もなく、安心しているのか、ノーリは、そう呟いていた。
空間の揺らぎを辿ってこの部屋に来た時に、ノーリがエルの部屋へとやって来た人物であるとほぼ断定している。
だけど、グラディウスが期待していたので、ほんの少しだけ、もしかしたら違うのかもしれないと思いもしたが、今の発言で、エルの部屋にやって来たのが、完全にノーリであると判明する。
「さて、アリーさんが眠るまで、動けそうにないし、何して待とうか…」
再び、ぶつぶつとノーリは呟きだした。
「荷物の整理でもしながら、今度こそ失敗しないように、もう一回アイテムの確認でもしとこうかな…」
そう言って、ノーリは、どこからともなく次々とアイテムを取り出し始めた。
『空間系… いや、アイテムボックスかな? かなり面倒ね…』
もし、ノーリが敵だと判明した場合、あれだと、何か危険なアイテムを持っていても全く分からない。
私の中のノーリに対する危険度が数段上がる。
「!?」
次にノーリが取り出したポーションのようなものが、手から滑り落ちるが、それが床に叩きつけられる前にノーリが両手で掴んだ。
「ふぅ、危なかった…」
掴んだポーションのようなものを再び落とさないようする為か、ノーリはすぐアイテムボックスにいれていた。
『あの慌てよう、そんなに大事な物なの? 見た目はポーションに見えるけど… まさか、エリクサー!!』
グラディウスの話では、貴重なアイテムをいくつも持っているようだし、高価な転移結晶も躊躇いもなく使っていたので、そんな人があんなにも大事そうに扱うのだから、もしかしたらと思ったが、
『まさかね…』
少し冷静になって考えると、幾度となく探していた物がむこうからやって来るなどと、こんな都合のいい事がある訳ないかと思ってしまう。
だけど、そう思った瞬間、
「エリクサーは、かなり手間取るから、エルマーナ様に飲ます直前までは出さない方がいいな…」
その発言を聞き、私の体は固まってしまった。