閑話・エルマーナ 18 ラウム視点
笑顔のエルに見送られ、私は精霊界の自分の部屋へと戻っていた。
当然たが、既にお父様やお母様の姿はない。
「ふぅ…」
ベッドに腰掛け、今日起こった事を振り返っていると、自然と笑みがこぼれていた。
「さて、とりあえず、お母様に報告しとこうかな…」
戻ってきた事やちゃんと精霊契約出来た事、エルの事についての相談など話したい事がたくさんある為、部屋を出てお母様のいるであろう場所へむかった。
その場につくと、扉をノックする。
「はい、どなた?」
「私だよ、お母様。入ってもいい?」
「あら、ラウム。帰ってきてたのね、どうぞ。」
「じゃあ、入るね。」
そう言い、部屋の中に入ると、お母様だけでなく、その隣に、少しげっそりとした顔をしているお父様が、床に正座したまま仕事をしていた。
たぶん、怒られたんだろうなと思いながら、お父様から視線を外しお母様の前へと進んでいく。
「改めておかえりなさい、ラウム。それで、どうかしたの?」
「はい。無事に精霊契約出来た事の報告と契約者について、ちょっと相談したい事があったので来ました」
「そう、無事に契や… 「誰だ!! どこのどいつと契約したんだ!!」」
お母様の声を遮るように、正座していたお父様が、足を震えさせながら声を荒げ立ち上がる。
私は、お父様の愚行ともいえるその行いに、更にお母様を怒らせたと内心呆れてしまう。
「あなた、誰が喋っていいって言ったのかしら?」
案の定、お母様の顔は笑顔のままなのに、周りの空気が少し冷え込んだように錯覚してしまう。
「あ、いやこれはその…」
お父様もやっと自分がやらかした事に気づいた。
「それに、正座をくずしていいとも言っていないわよ。」
「はい!!」
そう言われ、お父様は、すぐに正座した状態に戻る。
「今は、私とラウムが話をしているの。だから、どちらかが話しかけるまで黙っててくれるわよね、あなた?」
すっと、お父様の肩へと手を伸ばしながらお母様がそう尋ねると、ブンブンと音がする程速く、頭を縦に振っていた。
「分かってくれて良かったわ。」
ポンポンとお父様の肩を数回叩いてから、お母様は私の方へと向き直る。
「それじゃあ、話を戻しましょうか。それでラウムは、無事契約出来たのよね?」
「う… うん。」
「そう。おめでとう、ラウム。」
「ありがとう、お母様。」
「いいのよ。ほら、あなたもそんな顔しないで、祝いの言葉の1つでも言ってあげなさい。」
お母様から発言の許可がおりたのだが、
「ぐぬぬ…」
言うか言うまいか葛藤しているのか、祝いの言葉はなかった。