閑話・エルマーナ 11 ラウム視点
ナニーとやらの話を聞く限り、どうやら私がここにいたままだと召喚が出来ないらしく、契約に少し支障をきたすようなので、1度精霊界へ戻る事にした。
エルに、しっかりと私を呼んでくれるように頼み、私は精霊界へと戻った。
人界に来る際は、転移する場所がずれたりしてしまうが、馴染み深い精霊界への転移ならしっかりとずれなく転移出来る為、今私は、精霊界にある自分の部屋へと戻っていた。
エルが私を呼んでくれるまで、どの程度時間がかかるのかは分からないが、その時間も含め少しワクワクとした気持ちで召喚を待っていると、
「ラウム!!」
「!?」
お父様がノックもせずに急にドアを開け入り込んできた。
驚きはしたが、すぐに、
「急に入ってこないでよ!! 心臓が飛び出るかと思ったじゃない!!」
とお父様に怒鳴る。
「うっ… それは悪かった…」
私に気圧されたのか、お父様はすぐに謝ってくる。
「分かってくれればいいのよ。それじゃあ、お父様。回れ右して来た道を引きかして頂戴」
何故お父様が、ここにやって来たのか薄々感づいた私は、引き返すように言ってみると、
「分かった…」
その場で回れ右したかと思ったら、更に回れ右をして、
「訳ないじゃろ!!」
と怒鳴ってきた。
「チッ…」
そのまま戻れば良かったのにと思いを込めて、舌打ちをする。
「ラウムおま… 今舌打ち…」
いつもされているのに、毎回落ち込んでくるお父様を無視して、
「それで、お父様は、何しに来たの?」
ここに来た用件を尋ねる。
「おほん。そうじゃったな。私がここに来たのは、またお主が勉強もせずに人界へ行ったと聞いたからじゃ!!」
やっぱりその事だったか。
「はぁ… 誰にも迷惑をかけている訳じゃないから、別にいいでしょ?」
「確かにそうじゃが、そう言う訳ではない。お主は上位精霊なのじゃから、他の者に示しをつけるような行動をじゃな… 「はいはい、分かった分かりました。すみませんでした、お父様… これでいい?」」
いつ召喚されるのか分からないのに、長々とお父様の話を聞きたくなかった為に反省の意を示した。
「ん? 何かいつもより素直じゃないか?」
「そんな事ないわ。それじゃあ、謝ったんだからもういいでしょ?」
早く出ていけという意味を込め、ビシッと扉を指差しながらそう伝える。
「う… うん、反省しているんなら… いや、やっぱりおかしい。ラウム、お主何か隠し事しておらんか?」
「べ… 別に、あったっていいでしょ!!」
秘密にしないといけないという訳ではないので、契約の事を教えてもいいのだが、何だかお父様に言ったら負けのような気がしてきたので、勢いで乗りきる事にした。