閑話・エルマーナ 10
私だけでなく、ナニー先生も忘れていたみたいだった。
「どうしますか、ナニー先生?」
「そうね… 陣を書き直すにしても、ラウム様が顕現している状態で契約するのでは、少し違ってくるからね…」
「ん? 私がここにいたら、駄目なの?」
どうするか話そうとすると、三度出したクッキーを食べ終えたラウム様がそう聞いてきた。
「それはですね…」
それに対してナニー先生が、ラウム様に、魔方陣の事についての説明を始めた。私も、それを、しっかり聞いておく。
「そうなのね。なら、私は1度精霊界に戻るから、それで大丈夫でしょ?」
「そうですね。そうして頂けると有り難いです。」
「了解。なら1度戻るわね、エル。」
「分かりました。私の都合ですみません…」
「気にしてないから頭を上げて。それじゃあ、むこうで待ってるから、しっかり私を呼んでね、エル。」
「はい!! 頑張りますから、待っていて下さい、ラウム様!!」
「それじゃあ、またね。」
そう言って、ラウム様の姿が消えていった。
「ラウム様は、無事帰れたんでしょうか?」
「たぶん? 一応、もう少しだけ待ってみて、魔方陣に魔力を流してみましょうか。」
「分かりました。」
その後、少しして魔方陣に魔力を流し始める。
初めての召喚で、更にラウム様からの期待もあった為か、どこで流す魔力を止めていいか分からずに、ひたすら魔力を流した。
「ちょ… ちょっと、えっちゃん。魔力は、もう充分よ。だから、流すのはもう止めていいわ。」
「わ… 分かりました…」
ナニー先生に止められ、魔力を流すのを止め立ち上がろうとしたが、ふらついてしまう。
「魔力の流しすぎよ、えっちゃん。張り切る気持ちもわからない訳ではないけど、加減しないと駄目よ。」
倒れる前に、ナニー先生が受け止めてくれ、そう怒られてしまう。
「すみません、ナニー先生…」
「もう、いいわ。とりあえず、すぐラウム様も召喚されると思うから、座って待ちましょうか。」
「はい…」
座ってラウム様が召喚させるのを待つが、一向に召喚されない。
「召喚に失敗したんでしょうか、ナニー先生?」
「いや、そんなことないと思うわよ。魔方陣もしっかり書けていたし、ラウム様の名前もちゃんと陣に取り込んでいるしね。流す魔力は多かったけど、そんな事で召喚されないとは思わないし、もう少し待ってみま… って、ほらえっちゃん。魔方陣が反応し出したわよ。」
ナニー先生の言う通り、魔方陣が光だしていた。
そして、光だしてすぐに、少し疲れた様子のラウム様が召喚された。
作者より
精霊について
下位精霊
→ 特定のスキルなどを持っていないと、認識が難しいが、辺りに常に漂っている玉状の精霊。通常思考はあまり持っていないが、仮契約する事で、思考を持ち単純な作業なら出来るようになる。仮契約が解除されると、思考は元に戻る。また、名無し。
ただし、特異種が存在し、特異種はちゃんと思考を持っており、年月をかけ進化して名無しの中位精霊になる事もある。
中位精霊
→ 特定スキルがなくても、目に見える。人型や獣型などしっかりとした体を持つ。また、名前を持っている者も多く、思考もある。(家精霊など)
上位精霊
→ 自分で姿を見えなくする事が可能。名前をしっかり持っており、中位よりも、強力な力を持つ。(ラウムなど)
精霊王
→ 全ての精霊の頂点。
特定スキル
精霊眼 → 姿を消している上位精霊すら、認識できる。ハイエルフが持つスキル。
精霊視 → 姿を消している上位精霊を捉える事は出来ないが、辺りに漂っている下位精霊などは、認識する事が出来る。
精霊契約について
・人界にいる精霊との契約
下位精霊
→陣を必要とせずに直接魔力を与える事で、仮契約をし、一時的に使役する。
(土を掘ったり、周りの様子を探る時などに使用)
また、普通に陣で契約する事も可能。その場合、常に契約者の周りを漂っており、一定の思考を持っている。
中位精霊~
→陣を使い、契約する。ただ、契約しても、既に人界に顕現している為、陣を使って召喚する事は出来ない。
・精霊界にいる精霊との契約
下位~上位精霊
→陣を使い、召喚する。召喚には、ランダム召喚と特定召喚の2種類がある。
ランダム召喚は、その人にあった属性の精霊が位関係なくランダムで召喚される。
特定召喚は、契約したい精霊の名前を陣に入れ込む事で、召喚する。
どちらも、精霊に認めて貰わないと契約できない。
契約後は、簡易の陣(身に付けているものに刻む)に魔力を流し、召喚する。基本、陣に流した魔力がつきると返喚される。陣に追加で魔力を流す事も可能。
・人界で精霊と契約後、精霊が精霊界へ戻った場合
人界で契約用の魔方陣と召喚して契約する用の魔方陣は別物の為、再度召喚して契約する用の魔方陣で契約しないといけません。
理由としましては、人界で契約用の魔方陣には、召喚に関する事が陣に含まれていないからです。もし人界で、召喚に関する事を含んだ陣で契約しようとした場合、自動的に、ランダム召喚になってしまいます。