243話・実行
アリーさんが眠りについたのを気配察知で察した後、転移結晶で、エルマーナ様の部屋に転移する。
転移後は、持った来たランプで部屋を照らしながら、ベッドまで近づき、先程倒した椅子の上に持っていたランプを置いてから、エリクサーを取り出した。
「それじゃあ、後はこれを飲ませれば… っとその前に…」
持っていたエリクサーをランプの隣に置いてから、アイテムボックスからローブを取り出してから羽織る。念には念を入れて、顔を隠す為だ。
「よし、これで準備万端だ。」
僕はベッドに腰をおろしてから、ランプとエリクサーを置いた椅子をベッドに近づける。
「えっと… このままだと飲ませにくいからと… すみません。ちょっと失礼します。」
そう謝った後、寝ているエルマーナ様の背中に手をまわす。
先程グラディウスさんから紹介して貰った時も思ったけど、やっぱり顔は青白くやつれている。
僕は早く助けたいという気持ちを抑え、割れ物を扱うようにゆっくりとエルマーナ様の体を起こす。
「軽い…」
自然とそう口に出ていた。
エルマーナ様の今の感情を知っている身からしたら、沸々と怒りの感情が沸いてくる。
「落ち着け、僕…」
怒った所で、エルマーナ様にかけられている呪詛が治る訳ではないと深呼吸してから、近づけた椅子からエリクサーをとり、溢れないように栓をとる。
栓をとった後、それをエルマーナ様の口にあて、溢さないように少しずつゆっくり時間をかけて飲ませていく。
全部飲み終わる頃には、青白かった顔に赤みが戻ったように思える。
「治ったって事でいいのかな?」
一応、ナニーさんに聞いた話ではこれで治った筈だ。
僕は、空瓶をアイテムボックスいれてから、起こしていた体をゆっくりと倒しめくれていた布団をかける。
出来ればしっかりと治った事まで確認したい所だけどその手段まで用意していなかった為、これ以上僕に出来る事はない為、そろそろ戻ろうと立ち上がり転移結晶を準備した所で、
「んん… ここは…」
エルマーナ様が声を発した。
「!?」
それに驚いた僕の手から、持っていた転移結晶が滑り落ちてしまう。
すぐにそれに手を伸ばすが、伸ばした手は空を切り、転移結晶は床に落としてしまった。
「誰ですか?」
その声に一瞬体が固まってしまうが、そのままでいる訳にもいかないからとゆっくり振り返る。
すると、体を起こした状態で、僕の事をジーと見ているエルマーナ様と目があってしまう。
まぁ、目が合うといっても、僕はローブのフードを被っているから顔まではばれていないと思う。
作者より(注意)
作中に、寝ている相手にエリクサーを飲ませてますが、現実では、寝ている相手や意識のない相手に飲み物を飲ます事はとても危険な行為なので真似しないで下さい。