218話・むかった先
グラディウスさんに案内され、リビングにたどり着く。
リビングにつくなり、グラディウスさんは、一言残してから、どこへ行くのか聞く暇もなく、どこかへ歩いていった。
それを見送った後、置いてある家具を汚す可能性を考慮し、アイテムボックスから椅子を取り出し、そこに腰掛け、どちらかが戻ってくるまで待たせて貰う事にした。
少しして、ナニーさんがリビングにやって来てくれた。
「あら、ノーリ君だけなのね?」
「はい。グラディウスさんは、僕に休むように言った後、どこかへ行かれました。」
「そう…」
一瞬、暗い顔になったように見えたが、すぐに笑顔に戻る。
「そう言えば、その椅子はどうしたの? ここに、そんな椅子はなかった筈だけど?」
「あ、すみません。椅子を汚すといけないと思い、アイテムボックスから取り出しました。」
「そうなのね。気にしなくて良かったのに。」
「すみません…」
「別に、謝らなくていいのよ。それより、お風呂の準備が出来たから、ぐーちゃんもいないみたいだし、ノーリ君が先に入ったらどうかしら?」
「いいんでしょうか?」
「大丈夫よ。それに、私から、一言声をかけとくから。」
「分かりました。なら、入らせて貰います。」
「えぇ、どうぞ。浴室は、こっちよ。」
ナニーさんの案内で、浴室へむかう。
その途中に、
「ナニーさん。」
「どうしたの?」
「1つお伺いしたいのですが、宜しいですか?」
「…もしかして、ぐーちゃんの事?」
「はい、そうです…」
「ノーリ君は、ぐーちゃんがここに来た理由を聞いてる?」
「妹さんに会いに来たとだけ聞いてます…」
来る途中に、それだけ聞いた。
それ以上は、聞けそうな雰囲気ではなかったからだ。
「そう… まぁでも、ここに連れて来たって事は話しても大丈夫でしょう… 少し長くなると思うから、悪いけど、1度リビングに戻りましょうか。」
「分かりました。」
僕たちは、来た道を引き返し、リビングへと戻る。
今度は、リビングにあるソファに腰掛け、対面には、ナニーさんが座った。
◆
ノーリ君をリビングに案内してから、すぐに妹のエルマーナがいる部屋へとむかう。
部屋につくと、ノックもせずに、そのまま部屋へと入る。
部屋の中には、大きなベッドとその傍に腰掛けるようの椅子があるのみだ。私は、その椅子に腰掛け、未だ眠りについている妹の手を握る。その手は、氷のように冷たく、僅かな胸の動きがなければ、死んでいると勘違いしてしまう程だった。
自然と握っている手に力がこもった。