217話・待っていた人
グラディウスさんの後に続き、花畑の中に作られている道を進んでいくと、一軒家が見えてきた。
「あれが今回の目的地よ。」
「あれが…」
近づくにつれて、全貌が見えてきた。
家の周りには、高い柵のようなものがあり迂闊に入れないようになっている。
その柵の中へ、グラディウスさんの後に続き入っていく。
家じたいの1階建てのいわゆる平屋と呼ばれるものだった。
「入り口は、こっちよ、ノーリ君。」
「はい。」
平屋の扉をから中へ入ると、
「いらっしゃい、ぐーちゃん。あら? 今日は、珍しくお客様もいるのね。」
何故か、そこには隣街で別れた筈のリーベさんが出迎えてくれた。
「お邪魔します、ナニーさん。ノーリ君、この方は、リーベのお母さんで、私の乳母を勤めてくれた人よ。」
「そうなんですね。ぼ… あ、いえ、私は、冒険者をしてます、ノーリと言います。一応今回は、グラディウスさんの護衛という形で同行させて貰っています。」
リーベさんの顔にそっくりな、ナニーさんに挨拶をする。ん? リーベさんがナニーさんにそっくりなのか?
「これは、ご丁寧にありがとうね。私は、先ほどぐーちゃんが言ってたように、リーベの母で、ぐーちゃんの乳母をしていたナニーよ。それで、ノーリ君は、ぐーちゃんの護衛をしているって事は、とても優秀な子なのね。」
それは違いますと否定する前に、
「そうよ。私も注目している、かなりの有望株よ。」
と、先にグラディウスさんが言い出したので、否定するタイミングを逃してしまった。
「そうなのね。ぐーちゃんが言うから、間違いないわね。」
「えぇ、そうよ。それで、ナニーさん、エルマーナはどう?」
急に、声の質が変わったグラディウスさんの質問に、ナニーさんは、首を横に振るだけでそれに答える。
「そう…」
なんとなくしんみりとした空気が漂う。
「ぐーちゃんたちは、今日は泊まって行くでしょ?」
そんな空気を払拭するかのように、そう聞いてくる。
「はい、そのつもりです。ノーリ君も、大丈夫よね?」
秘密の抜け穴の通って来る途中に、何泊するかもと聞いていたので、
「はい、大丈夫です。」
と答える。
「なら、長旅で疲れたでしょ。すぐに、お風呂の準備をするから、ぐーちゃん、ノーリ君をリビングに案内してあげて。」
「分かりました。ノーリ君、リビングは、こっちよ。」
「はい。」
グラディウスさんに案内されリビングにつくと、
「それじゃあ、ノーリ君は、ゆっくり休んでいて。私は、少し席を外すわ。」
「分かりました。」
グラディウスさんは、すぐにリビングを後にし、どこかへ歩いていった。