216話・到着
秘密の抜け穴(巨木の下)から出てきた、グラディウスさんと話したライアさんが、人型の木を周りにある普通の木と同じ程の大きさの木に戻すと、その木と同化した。
何でも、秘密の抜け穴の見張りをしてくれるとの事だった。
「私たちはこっちよ、ノーリ君。」
「分かりました。」
歩き出そうとした所で、
「おっと、その前にちょっと待ってて。」
グラディウスさんは、そう言うと再び巨木の根の間に入っていき、少しして、戻ってくる。
「お待たせ。それじゃあ、行こうか。」
「はい。」
歩き出した、グラディウスさんについていこうとして、
「ぐうぇ」
突然何かに後ろを捕まれ、服が首に食い込む。
「ゴホッゴホッゴホッ…」
咳き込みながら振り返り、何が起こったのか確認すると、どうやらライアさんが木の枝を使って、僕を掴まえたようだった。
「大丈夫、ノーリ君?」
グラディウスさんが駆け寄ってきて、背中を擦ってくれる。
「だ… 大丈夫です。ライアさん、急に服を引っ張ってどうかしたんですか?」
「ごめん… その… 出来れば、果物置いていって欲しい…」
「余程ノーリ君の果物が気に入ったのね… ノーリ君、悪いけど私からも頼めるかしら?」
「はい、大丈夫ですよ。」
まだまだかなりの量をアイテムボックスにいれているので、それを了承し、アイテムボックスから果物を取り出し、ライアさんに手渡していく。
「ありがとう…」
その後、ライアさんと別れ、グラディウスさんの後についていく。少し歩いた所で、気になった事を尋ねる。
「そう言えば、先ほどは、何をしていたのですか?」
「ん? あぁ、木の下に入っていった事?」
「はい。」
「間違って誰かが入ってこないように、土の精霊に頼んで、穴を塞いでいたのよ。」
「そうなんですね。ん? なら、ライアさんが、見張りをする必要あるのですか?」
「いや、必要ないよ。」
「え? ならどうして?」
「ここに来るまでに、ライアには頑張って貰ったから、休んで貰っているのよ。でも、普通に休んでって言ってもライアはああ見えて頑張りやさんだから、休まないで私についてこようとするから、ああ言って休んで貰っているのよ。」
「そうだったんですね。」
その後も、話をしながら進んでいくと、森を抜け花畑に出た。
「綺麗な花畑ですね。」
「ありがとう。妹の好きな花たちなの…」
そう言ったグラディウスさんの横顔は何故か寂しそうだった。
「そうなんですね…」
「えぇ… それじゃあ、こっちよ。」
花畑を歩いていくと、一軒家が見えてきた。