212話・僕の出来る事
僕は、僕で出来る事をしようと思った。
と言っても、木魔法で出来た馬の操作は、ライアさんしか出来ないし、グラディウスさんみたいに、精霊にお願いする所か、話す事も出来ない。それに、このトンネルの周りの土は、土の精霊たちによってかなり頑丈に作られているらしく、モンスターや人と出会う事はないみたいで、自然と僕が出来る事は限られてくる。
「なら、食事の用意は任せて下さい!!」
アイテムボックスの中には、かなりの量の食材を入れてあるし、それならお役に立てると思い提案する。
「…分かったわ。そこまで言うなら、お願いするわね、ノーリ君。ライアもいいでしょ?」
「構わない…」
「はい、任せて下さい。」
2人の了承も得れたので、到着するまでの3日間、そっちを頑張ろうと思う。
◆
馬は、木で出来ており、止まって休ませる必要がないとの事で、お昼はそのまま走らせ、荷馬車の上で食べれる簡単な物(街で購入していたパンや家のダンジョン産の果物など)で済ませ、夕食は、しっかりとした物を作った。
「いや、トンネル内で温かい食べ物が食べれるとは思わなかったよ。これも、ノーリ君がいてくれたおかげね。」
「喜んで貰えて良かったです。」
普通なら、こんな狭い空間で、火を起こすと危ないと言われ、温かい料理は中々食べられないのだが、僕の場合は、火を使わず魔道具で温めるので、その心配もなかったからだ。
「果物も欲しい…」
「分かりました。」
ライアさんは、お昼に食べた果物が気に入ったようで、夕食の時も、要求してきたので、アイテムボックスから取り出し手渡す。
「はい、どうぞ、ライアさん。」
「ありがとう…」
ライアさんは、美味しそうに食べてくれた。
その後は、番をする人は必要ないので、皆で休む事になった。だけど、荷馬車の上で3人で寝るには狭いし、かといって広くても流石に一緒にとはいかない為、僕は、買っておいたテントの中に寝具を敷いて休んだ。
◆
私は、周りにいる精霊に、ノーリ君が寝た事を確認して貰ってから、横にいるライアに小声で話しかける。
「ねぇ、ライア?」
「…なに?」
既に寝ていたのか、やや眠たげな声だった。
「起こしては悪いわね。」
「別にいい… それでなに?」
「えっとね、ライアは、ノーリ君の事どう思う?」
何となく、ノーリ君の印象を聞いてみる。
「人族なのにいい子…」
「ふふ、そうね。まぁ少し、純粋過ぎる気もしなくはないけどね。」
「後、何となく同族の気配を感じた…」
「え… ライア、それはちょっと初耳なんだけど?」
「今言ったから、当たり前…」
「いや、まぁそれはそうなんだけど… それで、いったいどういう事なの?」
「言った通り… 何となく、そんな感じがしただけ…」
「そう…」
「もういい? 眠いから寝る…」
「あぁ、悪かったわね。おやすみ、ライア。」
「おやすみ…」
すぐに横から寝息が聞こえる。




