211話・いざ出発
下についてから、ランプを持ち上げ周りを確認すると、大人の人が2~3人程通れるほどの広さがあり、見える範囲ではあるが、それが奥まで続いていた。
どこまで続いているかは分からないが、かなりの距離があるのは、何となく分かる。
「グラディウスさん。ここからは、歩きですか?」
「違うわよ。ライア、お願い。ノーリ君は、私と一緒にこっちね。」
「了解…」
「分かりました。」
僕は、壁際に寄ったグラディウスさんの横に移動する。そして、何かを頼まれたライアさんが、詠唱をすると、階段だった木が動き出したかと思ったら、みるみる形を変えていき1匹の木の馬… いや、馬込みの馬車へと変わった。
ライアさんがついてくる理由の1つとして、移動の手助けとは聞いていたが、まさか馬車を馬込みで作り出すとは思わなかった。
「ありがとう、ライア。それじゃあ、出発しましょうか。」
「は… はい。」
馬車は、簡単な荷馬車みたいなもので、3人で乗り込み、出発する。馬は、ライアさんが操ってくれるみたいで、3日程で到着するらしい。
ここの道は、かなり均等に整地されているようで、殆ど揺れなどはないが、少しでも役にたとうと、寝具とは別に製作していた(レイの毛込みの、ほんのり温かい)クッションや予備の薄い布団を使って貰う。2つとも、ライアさんにも好評だった。
出発後少しして、ふと気になった事を尋ねてみる。
「そう言えば、ここはかなり深くにあるのに、息苦しかったりしないんですね。」
勇者が伝えたとされる事を綴った本で、山の高い所や海など、空気が薄かったり、殆どない場合など、息がしずらくなると読んだ事がある。
ここも、その空気があまりないのではと思い聞いてみると、風の精霊に頼み空気を運んで貰ったり、ライアさんがここの道の上にある木の根を通して、空気を送っていると教えてくれた。
それを聞いて、僕だけ何もせずにただ座っているだけという事に気づいてしまった。
「急にどうしたんだい、ノーリ君。なんか、すごい顔になってるよ。」
グラディウスさんにそう言われ、2人が何かしているのに、僕は何もしていない事に気づいた事を話す。
「そんな事ないと思うわよ。現にこのクッションかなり有り難いわよ。ねぇ、ライアもそう思うでしょ?」
「思う… 温かくて、便利…」
「そうですかね… ありがとうございます、2人とも。」
「だから、気にしなくていいのよ、ノーリ君。それに、私も、精霊にお願いしただけで、後はなにもしてないしね。」
そこまで言って貰ったので、僕に出来る事をしようと思った。
作者より(捕捉)
護衛依頼という事で、ノーリは、いつもより気を張っており、気持ちが少しネガティブよりになってます。




