206話・到着
私の提案で、夜の番を交代で行う事になった。
私の番は後からなので、先に休ませて貰う。
馬車の中で休もうとした所で、ノーリ君がアイテムボックスから何かを取り出してきた。
それは少し赤みがかっているようだが、寝具のようだ。
こんな物まで用意したのかと少し呆れながら、手渡された寝具一式を受け取ると何だかほんのり温かい。
気のせいかなとも思ったが、気になったので口にすると、付与が施されている物だと教えてくれる。
ノーリ君は、ごく普通に言っているようだが、かなり珍しい物だと思う。確かに、ダンジョンで、付与されている状態の武器などが出てくる事はあるけど、付与された布団等が出てきたなどの話を私は聞いた事がない。
だから、他の手段で付与された物(もともと付与のかかった素材を用いて作られた物など)だと思うのだけど、どちらにしてもかなり高価な物だと思う。だけど、ノーリ君は、その価値を理解している様子はない為、買った物ではないと思うのだが… まぁ、無理に聞く気もないし、今ここで考えても分からないので、考えるのを止め馬車の中へと入っていった。
中へ入ると、早速貸して貰った布団を広げ、横になってみる。
「あったかい…」
それに、肌触りもかなりいい。
念の為、周囲の警戒をしながら眠るつもりだったのだけど、気づけば深い眠りについていた。
「…ん、…さい。」
「んん…」
何かが聞こえる。
「グラディウスさん、起きて下さい。」
「!?」
今度は、ちゃんと声が聞こえ、私は飛び起きる。
職業からかすぐに、周りの状況を確認し理解する。
「ごめん、ノーリ君!! 交代時間よね。」
「は… はい。ですが、疲れているようなら僕が、このまま続けましょうか?」
ノーリ君は、心配そうな顔のままそう聞いてくる。
「大丈夫よ。ちょっと、布団が気持ち良かっただけだから。」
「そうなんですか?」
「えぇ、そうよ。ほら、ノーリ君は休んでててね。」
私はそう言って、すぐに馬車の外へ番をしに行った。
特に何もなく一夜明けた。
「おはようございます、グラディウスさん。」
「あぁ、おはようノーリ君。」
ノーリ君は私と違って、普通に起きてきた。
ちょっと複雑な気持ちになりながら、いつも使っているからと言い聞かせる。
その後、ノーリ君が作ってくれた朝食の野菜に添えられていた『まよねーず』とやらの美味しさに驚かされた。
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2日目・3日目も、御者の練習がてら僕がやらせて貰ったり、夜の番を交代でしたりしながら、特に何事もなく目的地に到着した。