202話・目的地
何故か、1頭引き馬車の御者をしたグラディウスさんがやって来た。
馬車はそのまま僕の隣で止まり、グラディウスさんが下りてくる。
「お待たせ、ノーリ君。」
「いえ、それはいいんですが、これどうしたんですか?」
「馬車の事?」
「はい。」
「借りてきたのよ。」
「…もしかして、僕のせいですか?」
「そんな事ないとは言わないけど、野宿する時に寝泊まりする為もあるから、そんなに気にしなくていいわよ?」
気を使って言ってくれていると気づく。
「…ありがとうございます、グラディウスさん。」
「別にいいのよ。それじゃあ乗って、ノーリ君。出発しましょうか。」
「はい。」
僕は、後ろへ乗り込もうとして、手を止める。
「どうしたの、ノーリ君?」
「あの… その、一応護衛としているので、こんな事を言うのはあれなんですが… 馬車の操作方法を教えてくれませんか?」
「え?」
「あの、少しでも役に立ちたいので… ダメでしょうか?」
「分かったわ。なら、隣に座ってくれる。」
「はい!!」
僕は、グラディウスさんと一緒に御者席に座り、出発する。
◆
僕は、グラディウスさんから操作方法を教えて貰いながら、道なりを進んで行く。
「そう言えば、今更なんですが、グラディウスさんの故郷って何処なんですか?」
僕は、御者の操作方法を学ぶ事に必死で、目的地がグラディウスさんの故郷である事は聞いていたが、それがどこで何処へ行くのかも聞かずに出発していたのに気づき尋ねてみる。
「メァーディスだよ。」
「メァーディスと言うと、確かエルフの国ですよね。」
「そうだよ。」
「なら、目的地もそこなんですか? 確か、エルフの国に入るのは結構厳しいチェックを受けないといけない筈ですよね。僕が入国出来るんですか?」
「私と一緒なら入国出来なくはないですけど、今回むかうのはその近くの森だから大丈夫だよ。」
「そうなんですね。それで、どのくらいかかるんですか?」
確か、僕の記憶が正しければここからメァーディスまで、かなり距離があったと思う。
「普通なら、3ヶ月くらいかかるわね。」
やっぱり、かなりの期間かかりそうだから、後でアコに連絡し、ソフィアに伝えて貰おうと思っていたが、
「だから普通じゃない手を使うつもりだから、そこまでかからないわね。」
「そうなんですか?」
少し驚き過ぎて、疑問系になってしまう。
「えぇ、だからノーリ君には、今回使う手について秘密にして貰いたいんだけどいいかな?」
「分かりました。誰に言いません。」
僕はそう断言する。