15話・ずるい女にずるい男
その後は、一言も話さないまま、馬車は図書館についた。
馬車から降りて、2人で図書館に入った。バレッタさんは用を終わらせてから来るとの事だった。そして、中には、利用者どころか職員すらもいなかった。
「無理言って、少しだけ2人きりにして貰いました。」
「そうなんだな…」
シャーロットは、少し顔をこちらにむけながら、教えてくれる。僕たちは、そのまま前までいつも使っていた、窓際の机に真横どうしに座る。
「「・・・」」
どちらも、話を切り出さず外の喧騒だけが聞こえる。何故だか居心地は悪くなかった。
だけど、このままでは話が進まないため、僕から話を切り出す。
「学園生活はどう?」
「楽しいと言ったら、嘘になりますね… やっぱり、私はノーリと一緒に学園生活を送りたかった… ノーリには、学園に戻ってきて欲しい…」
「そっか… ごめんなシャーロット… 僕は…」
「謝らないで下さい… 私のワガママだって事は、分かってますから…」
「・・・」
「それに…」
自然と、シャーロットと目が合う。
「今のノーリの顔は前みたいに、生き生きしています。私は、ノーリからその顔を奪いたくは、ありません…」
「シャーロット…」
「だけどもし、私でもノーリの力になれる時があったら、いつでも頼って下さい!!」
「だけど…」
シャーロットの人差し指が、僕の口を塞ぐ。
「これを聞き入れてくれたら、私に黙っていなくなった事は、水に流します!! それにこれは、王女命令です!!」
王女命令… そんな事、出会ってから1度たりとも使った事ないだろうに…
「それなら、断れないな… 分かったよ、シャーロット。」
「分かったらいいんです…」
ポトンッ
シャーロットの小さな頭が僕の胸にぶつかる。
「ノーリ、私ってずるい女だと思いますか?」
「なんでそう思うんだ?」
「だって私、少しでもノーリと一緒に…」
僕は、シャーロットの頭に手を起き、優しく動かす。
「僕は、別にそうは思わないよ。でももしそれがシャーロットの心のつかえになるのなら、僕の頼みも1つだけ聞いてくれかいか?」
シャーロットは、顔をあげて首をかしげる。
「頼みですか?」
「あぁ、シャーロットしか頼めない頼みだ。」
「任せて下さい!! 私の出来る事なら、なんだってします!!」
目を輝かせながら、そう言ってくれる。
「なら、聞いて貰おうかな?」
「何でしょうか!!」
「僕って実の所、冒険者の知り合いがほとんどいないんだ。」
「そうなんですね…」
「だから、月に何回か前みたいに、僕と会ってくれないか?」
シャーロットは、目を見開き、その目から1滴の雫が流れ落ちる。
「ダメか?」
シャーロットは、僕の胸に顔を埋め、首を左右にふる。
「全然… ダメなんかじゃありません…」
声を少し震わせながら、了承してくれる。
再び、シャーロットの頭の上に手を起き、
「ありがとう、シャーロット。」
と言いながら、バレッタさんが来るまで、優しく手を動かしていた。