183話・護衛依頼(裏)
コンッコンッ
「!? 痛っ!!」
ソファーで横になって寝ていたせいで、突然の音に驚き、そのままソファーから落ちてしまった。
ドアの外からは、マリヤの声がし、どうやら、もうノーリ君が来てくれたようだ。
すぐに起き上がり、寝ている間に出来た服のシワを伸ばしながら、入室許可を出す。
飲み物の準備をしてから、座り直し突然の呼び出しについて謝る。
一瞬、ノーリ君の視線が私の口元に来たような気がしたが、すぐにそれたので気にせずに、報酬を取り出してから渡す。
次に、ノーリ君からギルドカードを受け取り、私自ら更新する。更新し終えると、ノーリ君の反応を少し楽しみにしながら、ギルドカードを手渡し、魔力を流すように勧める。
魔力を流したギルドカードを見ながら、不思議そうな顔をしているノーリ君からの指摘に答えていく。
ノーリ君じたいBランクに上がる事に対して、不安を感じているようだが、私からしたら実力的には無理をしなければ、全然やっていけると思う。だけど、ここでその事を伝えても、あまり信じて貰えなさそうなので、
「強くなれ!!」
その一言を送ると、幾分表情が変わり、頑張っていく決意をしてくれた。
だから、先ほどの話でも出た護衛依頼の悔いを残さない様に、護衛依頼を頼むと了承してくれたので、護衛対象といつから護衛するのかを伝えた。
◆
「それで、グラディウスさんは、一体どこに行くんですか?」
「私の故郷だね。」
「グラディウスさんの故郷ですか?」
「そうだよ。一応、貯まっていた仕事も粗方片付けたし、ちょっと顔を出そうと思ってね。」
「そうなんですね。出発するのは、1週間後との事ですが、待ち合わせと時間はどうしますか?」
「そうだね… なら、ギルド前に朝の8時頃でどう?」
「分かりました、大丈夫です。」
その後、もう少し話をしてから、部屋を後にし、家へと帰った。
◆
ノーリ君が帰った後、マリヤを呼び出す。
1週間後に再びギルドを空けて、しばらく帰ってこない事を伝える為だ。
コンッコンッ
「マリヤです。」
「どうぞ。」
「失礼します。どうしました、ギルマ… ス…」
部屋に入ってきたマリヤの言葉がつまる。
「ん? どうかしたの?」
マリヤはそっと、口元を指差す。
「?」
「涎がついてます…」
「!?」
さっと、袖口で口元を拭う。
「どう?」
「とれてます…」
「そう… とりあえず、座ってくれる?」
「分かりました。」
マリヤが座ったのを確認してから、本来の目的を果たす。この前の出来事とは違い、今回はいつ頃帰ってくるか分からないので、マリヤにギルマス代理をお願いし、何とか了承して貰えた。