161話・ドリさんの気持ち
「アード… 妹を連れていってくれませんか?」
ドリさんは、神妙な面持ちのまま、そう言ってきた。
僕は、聞き間違いではないかと、聞き返す。
「すみません。よく聞こえなかったので、もう一度言って貰っても良いですか?」
ドリさんは、首を縦に降り、体を少し僕の方へと寄せて来た後、
「ノーリさんが帰る時、アードも一緒に、連れていってくれませんか?」
言っている内容は先ほどと変わならかった。どうやら、僕の聞き間違いではなかったようだ。
「…返事を返す前に、理由を聞いても良いですか?」
「分かりました。」
その後、ドリさんが何故、アードちゃんを連れていって欲しいのかを話し出した。
と、言っても先ほど聞いた話を更に、詳しくしたような内容だった。
「…と言う訳で、アードには私と違い、様々な事を見て・聞いて、知って欲しいんです。だから、ノーリさん、アードを連れていってやって下さい。」
ドリさんの言いたい事は、おおむね理解した。
ソフィアの事を考えると、転移結晶を使い、すぐこの森に来れるとはいえ、今後も、アードちゃんと一緒にいれる事は、ソフィアにとっても良い事だと思う。
「言いたい事は分かりました。ですが、もし、アードちゃんを連れていったとして、ドリさんはどうするつもりなんですか?」
話の中で、ドリさんがどうするのか言っていなかったので、それを聞いてみる。
「私は、この森に残るつもりです…」
やっぱりそうか…
「ドリさんも、ついてくるという選択肢はないんですか? アードちゃんも、ドリさんが一緒に来てくれた方が、喜ぶと思いますよ。」
「そうですね… 私もアードと離ればなれになるのは、思うところがあります。それに、ノーリさんの言う選択肢も考えなかった訳ではないです…」
「それなら…」
一緒に来ればいいと言う前に、
「確かに、ノーリさんやソフィアちゃんみたいに、人族にも良い方がいる事は分かりました… ですが私は、住んでいた森を荒らし、アードを拐った人族とうまくやっていける気がしないんですよ…」
僕は、それを聞いて咄嗟に何て返したらいいか分からなくなった。
そんな僕を見て、ドリさんは、
「それに、私の張ってある結界で、守っているのは私たちだけではないですから、私がいなくなってしまうと、色々とあるんですよ…」
「そう… なんですね…」
僕は、そう答えるので、精一杯だった。
「…返事は、明日聞かせて下さい。」
ドリさんはそう言ってから立ち上がり、料理をしている2人の元へと歩いていった。
僕は、どう答えるのが正解なのか、頭を悩ました。