156話・アードちゃんの魔法
開けた場所、そこには、横にまるまるとなってある大きな木が1本生えていた。
「ここが、私たちの住み処です。それじゃあ、中に入りましょうか?」
「中ですか?」
「はい、こっちです。」
ドリさんの後に続き、木の裏に周ってみると、そこには、蔦で出来た扉の代わりようなものがあった。
ドリさんたちに続き、蔦をくぐり中へと入ると、広めの部屋1つ分ほどの空間があった。だけど、その空間に対して置いてある家具は、木や葉っぱで出来たベッドが2つあるだけだった。
「どうして、寝るところしかないの?」
僕も、気になっていた事をソフィアが聞いてくれる。
「? 他に何か必要なものがありますか?」
ドリさんは、首をかしげながら、不思議そうに聞き返してくる。
「お姉ちゃん… 外には、お料理をする場所やお湯に体を浸ける場所があったりしたよ…」
「外には、そんなものがあるのね。」
そんな事を言うドリさんに対し、ふと思った事を尋ねてみる。
「ドリさんは、森の外に出た事がないんですか?」
アードちゃんも、今回初めて森の外に出たって言っていたし、ドリさんももしかして出た事がないのではと思ったからだ。
「え… そうなの、お姉ちゃん?」
どうやら、アードちゃんも知らないようだ。
ドリさんは、少し視線をさ迷わせた後、
「で… 出た事がない訳じゃないけど、街なんかに行った事はないかな…」
「そうなんですね… 何か理由でもあるんですか?」
気になってしまった僕は、勢いで尋ねてしまう。
「そうですね… あなた方なら話しても大丈夫でしょう… その前に、アード。座る場所を用意してくれる?」
「分かった…」
アードちゃんが何もない空間に手をかざすと、下から僕たち人数分の椅子とテーブルが現れた。
「凄いよ、アードちゃん!!」
僕と同じように驚いたソフィアが、アードちゃんを誉める。
「そうかな…」
「うん、そうだよ。ねぇ、お兄ちゃんもそう思うよね?」
「そうだね。僕も、本当に、凄いと思うよ。」
「ありがとう… お兄ちゃん、ソフィアちゃん…」
誉められたのが嬉しいのか、アードちゃんは、笑いながらそう言ってくる。
「別にいいよ。それで、今のは、魔法なの?」
「えっと、それは…」
尋ねられたアードちゃんは、すぐに答えずにドリさんの方を見る。ドリさんが、縦に首を振ると、答えてくれる。
「そうだよ… 植物魔法って言うんだよ…」
「へぇ、そんな魔法があるんだね。お兄ちゃんは、聞いた事ある?」
「あ… うん、前に1度だけ本に書かれてあるのを見た事があるよ。確か、とても珍しい魔法だって…」
僕は、少し言葉につまりながらも、そう答える。