155話・結界
顔を上げたドリさんは、
「なら、せめてお礼をさせて下さい。」
そう言ってきた。
「お… お礼ですか?」
「はい、そうです。」
「ですが、お礼を貰う事なんて何も…」
していないと答えようとする前に、
「お兄ちゃん… 私からもお願い…」
アードちゃんからお願いされてしまう。
僕は、それを断ることが出来ず、
「…分かりました。」
と了承する。
「ありがとうございます。でしたら、ここだとあれなので、私たちの住み処に案内したいのですがいいですか?」
僕は、ちらっとソフィアを見てみると、頭を縦に振る為、
「分かりました。ご迷惑でなければ、お邪魔させて貰えますか?」
「私から頼んだので、大丈夫です。では、案内しますから、ついて来て下さい。」
「分かりました。」
僕たちは、ドリさんの後に続き、森の奥へと進んでいく。因みに、ソフィアはアードちゃんと手を繋ぎ、僕の隣に歩いている。
そして、しばらく進むと、何だかこれ以上前に進むのに抵抗を覚えるようになってきた。横にいるソフィアに至っては、どこか別の方向へ歩きだそうとして、アードちゃんに止められていた。
何だか、おかしいと思っていると、
「あ!! すみません!!」
前を歩いていたドリさんが謝りながら、何かを呟くと先ほどまであった気持ちが失くなっていた。
「今のは、何なんですか?」
僕は、原因を知っているであろうドリさんに尋ねてみる。
「今のは、結界です。この先に、私たちの住み処があるので、誰かが侵入してくるのを防ぐ為、私とアード以外の生物に対して、この先に進みたくなくなるように働きかける効果のある結界をはっていました。」
「だから、前に進むことに対して、抵抗があったんですね…」
「すみません。先にやっておけば良かったんですが、何分人族を招き入れるのは初めてなので、事前にしておくのを忘れていました。今は、お2人を結界内に入れるようにしてあるので大丈夫だと思いますが、どうですか?」
「はい、今は大丈夫です。ソフィアはどう?」
「さっきまで、急に別の方へ行かないとって思ってたんだけど、今は、大丈夫だよ。アードちゃんも止めてくれて、ありがとね」
「どういたしまして…」
そんな2人のやり取りをみつつ、
「僕も、ソフィアも大丈夫なようです。」
「そのようですね。そろそろ、つくと思いますから、もう少しだけ頑張って下さい。」
「「はい!!」」
そして、ドリさんの言った通りもう少しだけ歩いていくと、開けた場所に出た。
そして、そこには、横にまるまるとなってある大きな木が1本生えていた。