153話・対面
転移後、振り返ろうとした瞬間、嫌な予感がした。
「2人ともごめん。」
僕は、そう言いながら、ソフィアとアードちゃんの2人をすぐに抱き抱え、その場から飛び退く。
飛び退きながら先程までいた場所を見てみると風の塊のようなものが過ぎ去っていった。
「ど… どうしたのお兄ちゃん!!」
「ど… どうしたの!!」
突然の行動に2人が驚く。
僕は、2人を声をかけながら下ろし、風の塊が飛んできた方を見る。
すると、少し離れた場所に、誰かの姿が見える。しかも、その内の1人は、宙に浮いている。
「あれが、僕たちに攻撃した… ん?」
良く見ると、浮いてない方の顔がどことなくアードに似ているような気がする。
そう思っていると、2人も僕の後ろから僕が見ていた方向を見る。
「誰、あの人たち?」
「お姉ちゃん…」
アードちゃんの言葉に、僕たちはアードちゃんを見る。
「え!! あれアードちゃんのお姉ちゃんなの?」
「うん…」
やっぱり、アードちゃんのお姉さんみたいだ。
「とりあえず、あそこに行ってみようか?」
「分かった。」 「うん…」
「でも念の為、2人は僕の後ろから出ないでね。」
僕は、そう言いアードのお姉さんのいる所まで、おそるおそる近づいていく。
◆
風の精霊に放させた風の弾は狙い通りに人族の背中にむけて迫っていく。
だけど、風の弾は人族に当たる事はなかった。
「!?」
当たる前に、横にいた人族とアードを抱え躱した。
まさか躱されるとは思わなかった。しかも、人族がこっちを見てきた。
「気づいたか…」
だけど少し様子が変だ。
私に気づいている筈なのに、人族は、武器を抜いたり、アードを人質にする事なく、逆にアードを庇うようにこっちにむかって来た。
しかも、良く見ると人族は、どちらかと言うと子供のような見た目だった。
私は、風の精霊にすぐ攻撃できるように待機させ、人族たちが来るのを待った。
◆
警戒して近づくが、最初に風の塊が飛んできて以降、攻撃は飛んでこなかった。
僕たちは、ある程度の距離まで近づき、声をかける。
「僕は、ノーリと言います。保護したアードちゃんを送り届けに来ました。」
「保護?」
「はい、そうです。ほら、アードちゃんも。」
僕は、そっとアードちゃんの背中を押し前に出す。
「お姉ちゃん…」
「アード…」
呼びあった後、沈黙が続く。
少しして、
「あのね、お姉ちゃん…」
アードちゃんから話を切り出す。
「なに?」
「お姉ちゃんの言うこと聞かずに、勝手に森の外に出てごめんなさい…」
「そうね… とっても心配したわ…」
「ごめんなさい…」
「でも、無事に戻って来てくれて安心したわ…」
「お姉ちゃん…」
「おいで、アード。」
「お姉ち゛ゃん!!」
アードちゃんは泣きながら、お姉さんの元へと飛び込んでいった。