152話・転移先にて
「ううん…」
目が覚めた私は、大きく伸びをする。
伸びを終えると、目の届く範囲に、アードがいない事に気づく。
「アード、どこにいるの?」
私は、アードの名を呼びながら、近くを探してみる。
「いないわね…」
私は、アードを見ていないか、近くにいた木に話しかける。
私が話しかけた木は、ざわざわと枝葉を揺らす。
「ありがとう、むこうに行ったのね。」
私は、木が教えてくれた方角へ歩いていく。
それでも、アードの姿は見えない。少しして、私はまた別の木に話しかけ、アードがどこに行ったのか教えた貰う。
「あっちね… でも、この先は…」
私は、少し小走りで教えて貰った方角へむかい、ある場所で立ち止まる。
「アードを見なかった?」
私は、近くの木々全てに聞く。
木々は一斉に枝葉を揺らし、教えてくれる。
「そう… やっぱり、結界の外に出たのね…」
私は、すぐに風の精霊を召喚し辺りを探索させる。
私も、木々たちに聞いて周りアードを探す。
少しして、召喚した風の精霊が私の元へと戻ってきた。
「見つけたの!!」
私はすぐにそう聞くが、風の精霊は首を横に振り、私の腕を引っ張りどこかへ連れていこうとする。
私は、されるがままついていく。
ついていった先の森… より正確に言うなら、木や土が荒らされていた。しかも、その場所は、少し歩けば森の外に出ていける距離だ。
私は、風の精霊にお礼をいい、送喚する。
その後すぐに、周りの木々にアードの居場所を聞いてみる。
「なに…」
私は、聞き間違がえたのではないかと、もう一度聞いてみるが、先程と変わらない答えが返ってきた。
「アードが、人族に捕まった…」
私は、その言葉を理解するのに、数瞬の時間を要した。そして、完全に理解した時には、怒りにどうにかなりそうになるが、何とかそれを落ち着け、アードを探す為、再度風の精霊を召喚する。
召喚した風の精霊に指示を出そうとした瞬間、目の前の少し離れた場所に、人族に手を捕まれたアードの後ろ姿を見つけた。
「あいつか!!」
とりあえずアードの手を捕まえている奴めがけて、召喚した風の精霊に風の弾を放って貰う。
◆
アードちゃんが、転移結晶に魔力を流し、一瞬で目の前の光景が変わった。
光景が変わってすぐ後ろ側に、何かの気配を感じた。
振り返ろうとした所で、何か嫌な感じがした為、振り返るのを止め、2人を抱き寄せその場から離れた。
作者より(捕捉)
~木との会話風景~
「小さな子供を見なかった?」
『ミタ… ヒト… ツカマッタ…』
的な感じです。
因みに、木の年齢によって話し方が変わります。