147話・ただいま
念話を経由で、レイの声なき悲鳴が聞こえた。
僕は、すぐにレイのもとへ戻った。
レイは、さっきまで果物を食べていた場所で、苦しそうにもがいていた。
「どうした、レイ!!」
僕は、慌てる気持ちを押さえつつレイに話しかけながら、もがくレイに近寄る。
『メェ… (息が…)』
「息?」
もしかして…
僕は、レイの首から背にかけて、擦ったり、叩いたりする。
すると、レイの口から何が飛び出した。
口から飛び出した物が原因だったようで、レイは次第に落ち着く。
『メェ… (助かった…)』
「それは、良かったけど…」
僕は、飛び出した物をよく見てみると、それは、先ほどレイに渡した食べかけの果物だった。
どうやら、果物を喉に詰まらせたらしい。
「はぁ… レイ。もっと、ゆっくり食べなよ…」
『メェ… (つい…)』
「次は、気を付けてくれよ。」
『メェ… (はい…)』
「それじゃあ、僕は行くね。」
僕は、レイの頭を撫でた後、後ろを気にしながら、上へと戻った。
◆
僕は、少し駆け足で、ポリーナさんの家へとむかった。
家についた僕は、息を整え、扉を開けようとした所で、先に扉が開いたので、反射的に受け止める。
「あれ、開かない?」
ん、この声は…
僕は、後ろに下がりながら、受け止めていた扉から手を離すと、扉が開いた。
「開いた… って、お兄ちゃん!!」
「ただいま、ソフィア。」
「おかえりなさい!!」
飛び付いてきた、ソフィアをそっと受け止める。
そっとソフィアの後ろを見ると、そこには、アードちゃんもいた。
「アードちゃんも、ただいま。」
「おかえりなさい… お兄ちゃん…」
アードちゃんも、そっと駆け寄ってきたので、頭を撫でてやる。
撫でるのを止め、ソフィアをそっとはがす。
「それで、今から2人で、どこかへ行くのかい?」
「うん。アードちゃんに街を案内しようと思って。」
「そっか。なら僕も、ついて行ってもいいかな?」
「はい、大丈夫です!!」
「アードちゃんも、いいかな?」
「はい!!」
「なら、ポリーナさんに挨拶してくるから、ちょっと待っててね。」
そう言ってから、家へと入るが、ソフィアの声が聞こえていたのか、ポリーナさんも来ていた。
「帰ってきたかい、ノーリ。どうやら、怪我はないようだね。」
「ただいま、ポリーナさん。はい、大丈夫です。」
「そうかい。それを聞いて、安心したよ。なら、夕食は、腕によりをかけて作るから、食べていくんだよ。」
「はい。何から何まで、すみません。」
「別に、いいさ。」
その後、追加の夕食の食材を頼まれ、ソフィアとアードちゃんと一緒に、街中へとむかった。