閑話・2人の少女
私が、部屋にいると突然、誰かが現れた。
少し驚きもしたが、すぐに誰だか分かった。
お兄ちゃんは、急いでいるのか説明もなく、後ろに控えていた子を私に預けてくる。
頼られる事が少し嬉しかったのもあるけど、私はすぐにそれを了承した。
その後、お兄ちゃんは、すぐにどこかへ行ってしまい、2人っきりになった私は、まず自己紹介から始めた。
すると、アードちゃんは、お腹が空いているようだったので、私は、アードちゃんの手を引き、部屋を後にした。
◆
「アードちゃんは、何か嫌いな物はある?」
「嫌いな物ですか?」
「うん、そうだよ。」
「特にないです…」
「良かった。なら、今から作るから、ちょっと待っててね。」
「はい…」
私は、卵などを取り出してから、調理を始める。
アードちゃんは、椅子に座る事なく、私の後ろで、ジーと見ている。少し、恥ずかしいが、私はそのまま続ける。
今作っている料理は、"タマゴ焼き"と言う物だ。ニホンショクを出してくれるお店で、お兄ちゃんが気に入っている物だ。休みの時に、こっそりとお店に聴きに行き、必死に頼み込んで、これだけ教えて貰った。
因みに、お兄ちゃんには、まだ出した事はない。そろそろ、自分でも納得出来る物になってきたから、帰って来た時に、作ろうと思っている。
「アードちゃん。そろそろ、出来るから、そこにあるお皿をとって貰ってもいい?」
「は… はい!!」
とって貰ったお皿に、出来立てホヤホヤのタマゴ焼きを盛り、場所を変える。
「熱いから、ゆっくり食べてね、アードちゃん。」
「う… うん!!」
アードちゃんは、恐る恐る手に握ったフォークをタマゴ焼きに突き刺し、口に運ぶ。
「お… 美味しい!!」
アードちゃんの口から、そう溢れる。
「良かった。」
口に合うか心配だったけど、大丈夫だったようだ。
「こ… これって、なんて言う食べ物なの?」
「それは、タマゴ焼きって言ってね…」
私は、尋ねられた事に答え、おしゃべりしだす。
話していて分かった事だが、どうやらアードちゃんは、卵を初めて食べたようだ。
「なら、アードちゃんは、お姉ちゃんと2人で、森の中で暮らしてるんだ?」
「うん… そうだよ。」
「それで、基本は、木の実や果物、キノコなんかを食べていると?」
「うん。」
「そ… そうなんだ。」
その後も、部屋を移動し、おしゃべりを続けた。
お昼に、ポリーナおばさんが帰ってきて、夜に、ダニールおじさんが帰ってきた。
アードちゃんの事は、そのまま説明すると、2人とも快く迎え入れてくれた。
◆
夕食は、アードちゃんにも手伝って貰った。
勝手が分からないなりに、アードちゃんは、とても頑張ってくれた。
夕食を食べ終えた後は、2人で体を拭き、
「それじゃあ、おやすみ、アードちゃん。」
「おやすみなさい… ソフィアちゃん。」
床に入り、眠りについた。
お兄ちゃんが、無事に帰ってくる事を祈りながら…