146話・帰還
グラディウスさんの話を聞き、僕はギルドを後にした。帰る前に、少しテットさんたちを探そうかと思っていたら、ギルドを出た所で、
「お、ノーリ君じゃないか。」
運良く、テットさんらと遭遇した。
「テットさん。他の皆さんも、もう体は大丈夫なんですか?」
「おう、完全に回復したよ。それより、会えて良かったよ。ノーリ君に、渡したい物があったんだよ。」
そう言って、テットさんが袋を取り出し、手渡してくる。袋を受け取ると、ズシリとした重さがあった。
「これはなんですか?」
なんとなく、このズシリ感に覚えがあるが、尋ねてみる。
「俺たちからのお礼だよ。ノーリ君には、世話になったからね。」
やっぱりか…
一瞬、返そうかとも思ったが、テットさんらの顔を見て、返すのを止める。
「分かりました。受け取らせて頂きます。」
「そうして貰えると、助かるよ。」
テットさんたちは、ホッとしたような顔をされる。
その後、少し話をしてから、テットさんたちと別れ僕は、街の外へ出た。テットさんたちは、4人でパーティーを組み、暫くは、ここを拠点にし、Cランクを目指すようだ。何気に、Cランク昇格を辞退していた事に驚かされた。
外に出て、人気のない場所へむかう。
「ここら辺で、いいかな。」
僕は、アイテムボックスから、転移結晶を取り出したけど、
「帰るだけなら、あれでいけるか?」
僕は、転移結晶をアイテムボックスに戻し、
「ダンジョン移動!!」
一瞬で、目の前の光景が変わる。
『おかえりなさいませ、マスター』
アコの声が、少し懐かしく感じる。
「ただいま、アコ。僕がいない間、何もなかったかい?」
『はい、変わりありません』
「良かった。なら僕は、ソフィアたちを迎えに行ってくるね。」
『はい。いってらっしゃいませ、マスター』
「ダンジョン移動!!」
僕は、上のダンジョンの階段前に移動する。
「ん?」
珍しい事に、階段近くで、レイが眠っていた。
「レイが階段近くで眠ってるなんて珍しいね。どうかしたの?」
「メェ~ (見張り)」
「!?」
どうやら、レイは、ダンジョンを守ってくれていたようだ。
「そっか。ありがとう、レイ。もう、大丈夫だから、これ良かったら、食べて。」
僕は、アイテムボックスに入れていた果実を何個か取り出し、レイの前に置く。
「メェ (ありがとう)」
お礼を言ったレイは、渡した果実を美味しそうに、食べ始める。
それを横目で見ながら僕は、上へ戻ろう階段に上ろうとしたところで、
「(ん~~!!)」
「!?」
念話を経由で、レイの声なき悲鳴が聞こえた。
僕は、すぐにレイのもとへ戻った。