143話・リーベ
リーベさんの耳は、グラディウスさんと同じで、少し尖っていた。
「あら、この耳が珍しい? 私も、そこにいるグラディウスと同じで、エルフよ。」
リーベさんは、そう教えてくれる。
「そうなんですね。わざわざ、ありが…」
ぐー
教えてくれた事に対するお礼を言おうとした瞬間に、またしても、僕のお腹は突然に鳴り出す。
「ふふ… リーベ。悪いけど、先にご飯の用意をしてくれる?」
「えぇ、分かったわ。いつものを2人分でいいかしら?」
「それで、お願い。それじゃあ、ノーリ君。私たちは、席の方へ行こうか。」
「は… はい…」
僕は、顔を真っ赤にしながら、グラディウスさんに背中を押されながら進んでいき、個室へと入った。
◆
個室にて、料理を待っている間に、先ほどの失態を話に持ち出される前に、別の話をふってみる。
「グラディウスさん。ここは、いったいどういう所なんですか?」
グラディウスさんのおすすめのお店という事は聞いているが、僕たち以外のお客さんがいるように思えないから、そう聞いてみた。
「最初に言った通り、私のおすすめのお店よ。ただ、少し特殊である事には変わりないけどね。」
「特殊ですか?」
「そう。一応、頼めば料理を出してくれるけど、本業は、情報屋なの。」
「そうだったんですね。」
だから、こんな時間なのに関わらず、人がいなかったのか。
「ノーリ君も、何か聞きたい事があったら、尋ねてみるといいよ。だけど…」
グラディウスさんが、そっと顔を近づけてくる。
「かなりの情報料を持っていかれるから気を付け… 痛っ!!」
部屋に入ってきたリーベさんは、容赦なくグラディウスの頭の上に、拳を振り下ろしていた。
「グラディウス、変な事教えないの。それに、私が貰ってる情報料は、ちゃんとした適正価格よ。だから、ノーリ君も何かあったら、いつでも聞きに来て大丈夫よ。」
「はい。何かあったら、尋ねさせて貰います。」
「リーベ。それより、ご飯は?」
「はいはい、ちゃんと用意してるわよ。今持ってくるわ。」
リーベさんは、部屋を出てすぐに、料理を持ってきてテーブルの上に並べてくれる。
並べられた料理は、野菜を使っている物が多かった。
「それじゃあ、食べようか、ノーリ君。」
「はい!!」
僕は、グラディウスさんの合図で、料理に手をつけ始める。空腹だったからか、料理が美味しかったからか、一口食べ始めると手が止まらなくなっており、気づけば全て平らげていた。
◆
「ノーリ君。料理は、どうだった?」
「とても、美味しかったです。」
「ふふ… それは、良かった。それで、ノーリ君は、この後どうする予定なの?」
「この後ですか?」
「えぇ、そうよ。時間が遅いから、今日は宿屋に泊まるとして、いつ頃王都へ帰る予定?」
「そうですね… 妹たちの事もありますから、用がなければ、すぐに帰りたいですかね。」
「そっか。」
「それで、グラディウスさん。僕が受けていた特別依頼は、達成出来たという事でいいんでしょうか?」
「えぇ、達成よ。報酬については、後日王都に戻った時に、渡すわね。」
「はい、それで大丈夫です。」
特別依頼が達成出来たというなら、明日にでも、王都へ帰れそうだ。