１３７話・正面突破
僕たちは、商会へと入っていった。
「中は、至って普通なんですね？」
商会の中は、客が品物を眺めている至って普通の光景が広がっていた。
「まぁ、一応外見は、普通の商会だからね。それに、入ってすぐにバレるような事はしないでしょ。」
「それも、そうですね。それで、どうやって捕らえるんですか？」
一応、声を潜めて聞いてみる。
グラディウスさんは、少し口角をあげながら、
「正面突破する予定よ。」
「し… 正面突破ですか？」
僕は、聞き間違いかと思い聞き返すが、
「そうだよ。２人は、上の部屋にいる筈だから、それじゃあ、行こうか、ノーリ君。」
「わ… 分かりました。」
僕は、いつでも戦闘に入れるように、気を更に引き締め、グラディウスさんの後についていく。
だけど、奥に通じる通路へむかおうとした所で、
「すみません、お客様。ここから先は、関係者以外立ち入り禁止になってます。商品が置かれているのは、あちらになりますので、お引き返し下さい。」
従業員らしき男に止められる。
だけど、グラディウスさんは、
「悪いね。私も、用事があってここに来てるから、引き返せないんだよ。」
「…商会長への面会予定は、入っていなかったと思いますが？」
「確かに、面会希望した覚えはないね。」
「でしたら、お引き返し下さい。」
「そうか…」
あれ？ 正面突破するって言っていたのに、グラディウスは、踵を引き返す…
かと思ったが、すぐに足を止める。
「そうだ。最後に、１つ聞きたい事があるけどいいかな？」
「何でしょうか？」
「上に、指名手配されている男がいると聞いたんだけど、君は知らないか？」
「！？ ぞ… 存じ上げないですね…」
「そう… なら、自分で確かめるよ。」
「貴方、何を… うっ！！」
グラディウスさんが、一瞬のうちに従業員に近寄ったかと思うと、従業員は倒れた。
お腹に、いい一撃を貰ったからだろう。
「ぐ… グラディウスさん、良かったんですか？」
僕は、グラディウスさんに近づき声をかける。
「大丈夫よ。それにこの男、あいつがここにいる事知っているようだったしね。」
まぁ、確かに言葉をつまらせてたけど…
「でも、騒ぎを起こしたら、逃げられませんか？」
「それは、大丈夫だよ。」
グラディウスさんは、そう言ってから僕の後ろを指差す。僕は、その指の先に視線をむけると、
「な… なんですか、あれ？」
ここの従業員たちが、既に捕縛されていた。しかも、捕縛しているのは、たぶん客として品物を見ていた人たちだ。
「全員、私の部下だよ。一般の客を装って先に、潜り込ませておいたの。」
「そ… そうだったんですね。」
「えぇ、だからここは彼らに任せて、私たちは上に行きましょうか？」
「分かりました。」
グラディウスさんの後に続き先へ進む。
