129話・部屋の中
作者より(注意)
人によっては、苦手な表現があるかも知れませんので、お気をつけ下さい。
中や周りには、人の気配はないので、この部屋も確認する為、扉に手をかけそっと開けていく。
中は薄暗かったが、廊下の灯りが中を照らし出し、部屋の中が目に入った。
最初は、物かと思った。だが、強烈な鉄臭が鼻腔を通りあれと目があった瞬間に、あの物体が、何であったのかを悟った。
悟ると同時に、腹の奥から込み上げて来る物があり、僕はその場でしゃがみこみ、それに逆らえずに、口から吐き出してしまった。
「はぁ… はぁ…」
僕は、荒い息を整える前に、部屋を閉め、扉を背にし座り込んだ。
「なんだよ… あれ…」
声に出してみたが、誰かから答えが返ってくる訳もない。それに、あれが何なのか、薄々気がついている。
僕は、足に力を入れ、立ち上がる。
アイテムボックスから布を取り出し、口元に巻き付け、軽く震える手を逆の手で押さえながら、再びドアノブに手をかけ、扉を開く。
◆
「なぁ?」
「どうした?」
「さっき、忘れ物を取りに来た奴ってさ、名前なんて言ったっけ?」
「さぁな。たまに、木箱を持ってくるだけで、お互い名乗ってもねぇし知らねぇよ」
「それも、そうか」
「それで、そいつがどうかしたのか?」
「いやな、そいつここに入ったきり戻ってこねぇなと思ってな」
「そう言や、そうだな」
「一応、確認しに行ってみるか?」
「そうだな。どうせ、ここで立ち番してても、端にあるこんな倉庫に誰も来やしねぇしな」
「なら、行ってみようぜ」
「おう」
俺たちは、倉庫の中へと入る。
◆
また、あの臭いが襲ってくるが、先程でもない。
僕は、部屋の中へと足を踏み入れ、魔法のランタンを取り出してから、一応扉を閉めておく。
扉を閉めた事で暗くなったが、ランタンに魔力を流すと、ランタンの中にある魔蓄光石が魔力を蓄積し、その魔力を使い光始める。
廊下の光より明るいので、部屋の中がよく見える。
床や壁には、赤黒いしみが無数にあり、端の方には、簡易ベッドのような物や鉄の腕輪などが置いていた。
僕は、例のものの傍に恐る恐る近寄る。
それは、全身に殴打や裂傷が無数にある小柄な女性だった。いや、小柄なのかと思ったが、それはすぐに間違いである事が分かった。両足が近くに転がっていたからだ。
僕は、怒りで震える手で、女性の見開いていた目をそっと閉じてあげながら、先ほどの行為を謝罪すると同時に、必ずそんな事をした奴を捕らえる事を誓う。
最後に、気休めにもならないが、回復薬を振りかけ近くにあった彼女の服らしき者を上にかけ、再度彼女に対しての黙祷を捧げ部屋を出る。
部屋を出たと同時にこちらに歩み寄ってくる2つの気配を感じた。