127話・避難
僕は、この後の行動を手早く考え出す。
「これでいくか…」
思い浮かんだ案は、アードちゃんを1度安全な場所に避難させた後、ここに戻って来て証拠を探すというものだ。
「お兄ちゃん?」
アードちゃんが心配そうな顔で見てきていたので、笑顔で返し、
「アードちゃん。大切な話があるから聞いてくれるかい?」
そう話を切り出す。
「大切なお話?」
「うん、そうだよ。聞いてくれるかい?」
「うん… 分かった…」
「ありがとう、アードちゃん。なら、話すね…」
僕は、これからの事を簡単に説明する。
説明を終え、最後に、
「必ず、もといた場所に送り届けるから、待っていてくれるかい?」
そう締め括る。
アードちゃんは、少し考えた後、
「分かった… お兄ちゃんを信じる!!」
「ありがとう、アードちゃん。それじゃあ、手を出してくれるかい?」
「うん…」
僕は、アードちゃんの小さな手を握り、アイテムボックスから、転移結晶を取り出し、転移する。
「きゃ!!」
転移は成功したが、転移先にいた人を驚かせてしまったようだ。だけど、僕からしたら、探す手間が省けて丁度良かった。
「お… お兄ちゃん?」
「悪い、ソフィア。話してる暇がないんだけど、この子と一緒にいてくれるか?」
「この子?」
僕の後ろにいたアードちゃんを前に出す。
「良く分からないけど分かった、お兄ちゃん。」
「ありがとう、ソフィア。アードちゃん、これが転移する前に、話した妹のソフィアだよ。さっきも言ったけどソフィアと待っててね。」
「うん…」
「それじゃあ、ソフィア。僕はまだやる事があるから、行って来るね。」
「気を付けてね、お兄ちゃん!!」
「了解!!」
僕は、2個目の転移結晶を取り出し、牢屋へと転移する。
◆
「本当に、気を付けてね、お兄ちゃん…」
お兄ちゃんが転移していった空間を見つめ、もう一度呟き、隣の子の方へむき直る。
「私の名前は、ソフィア。あなたの名前は何て言うの?」
「アードです…」
「なら、アードちゃんって呼んでいい?」
「うん… いいよ…」
「ありがとう、アードちゃん。私の事は、アードちゃんの呼びやすい呼び方で呼んで」
「な… なら、ソフィアちゃん…」
「うん、それでいいよ。それじゃあ、何をしよ…」
うかという前に、
キュルル~
と音がなる。
アードちゃんを見てみると、顔を伏せて見えないけど、耳は赤くなっていた。
「先に、何か食べようか?」
耳を真っ赤にしたアードちゃんは、何も答えてくれない。
「ねぇ、アードちゃん。」
「な… なに、ソフィアちゃん…」
今度は、答えてくれる。
「私ね、お兄ちゃんの為に、料理頑張ってるんだけど… アードちゃんがいいなら、味見してくれないかな?」
アードちゃんは、少し赤い顔をあげ、頷いてくれる。
「それじゃあ、行こっか、アードちゃん。」
私は、そう言って手を差し出す。
「うん… ソフィアちゃん。」
恐る恐る、手を握ってくれたアードちゃんを引っ張り、部屋を後にした。