125話・憤り
リーダーに頼まれた事を早く済ませようと、階段近くにかけてある鍵を取りに行き、牢屋の鍵を開け、転がっている空箱に近づいた瞬間、強い衝撃を受ける。
「なっ!!」
何が起こったのか分からないが、気づいた時には、俺は床に押さえつけられていた。
抜け出そうと力を込めるが、抜け出せない。誰が押さえつけているのか横目で見ると、空箱だった。
空箱に色々言ってみると、突然押さえている力が弱まったので、俺は、力を込めて跳ね起きる。
「よくもやってくれやがったな!!」
俺は、座り込んである空箱を蹴りをいれる。
更に俺は、追い討ちをかけるように、倒れた空箱を踏みつけるよう足を振り下ろす。
◆
「そうだ!! 空箱お前、確か妹がいたな。すぐに俺を離さないと、妹もお前と同じ奴隷にするぞ!!」
男は、そう言ってきた。
気づけば、僕は、押さえていた筈の男に蹴られ倒れこんでいた。更に、倒れこんだ僕めがけて、足が振り下ろされる。
咄嗟に、その足を掴み、腕の力だけで押し返すと、男はすぐに倒れてしまう。
僕は、アイテムボックスから聖剣を取り出しながら、立ち上がる。倒れた男が、何か喚き散らしているが、何を言っているか聞き取れない。ただ、僕の頭の中では、先ほどの言葉が繰り返している。
「妹を… ソフィアを奴隷にするだと…」
沸々と怒りがこみ上げてくる。
僕は、完全に男を斬るつもりで、聖剣を構える。
握っている拳に力を込め、踏み出そうとした瞬間、
「お兄ちゃん!!」
その言葉が、僕を止める。
振り返ると、牢屋の角で、カモフラージュマントを被って隠れていたアードちゃんが、マントを脱ぎさり、力強い目で僕を見ていた。
「アードちゃん…」
先ほどまであった、怒りが徐々に消えていき、冷静さを取り戻していく。
冷静さを取り戻した僕が、視線を前に戻すと、
「死ね!!」
掛け声と共に、男が、飛び上がりながら、剣を振り下ろしてきた。
僕は、その剣を、体を横にずれるだけで躱しながら、聖剣の柄頭部分で、男の急所に叩きつける。一応、手加減はしておいた。
ちゃんと、手加減は出来ていたようで、男は、気絶すること無く、振り下ろした剣を落とし、急所を押さえジャンプしながら、少し後ずさり、その場に座り込んでしまう。
僕は、落ちた剣を拾い、アイテムボックスにいれ、回復薬を取り出し、
「聞きたい事に答えてくれたら、この回復薬をあげるよ」
そう男に伝える。
「は… 早く、寄越しやがれ!!」
「先に、質問に答えるが先だよ」
「わ… 分かったから、早く質問しやがれ!!」
そう言ってくれたので、僕は質問を始める。