122話・治療
無事に斬り終えたので、今度は元々ある傷を癒す為、アイテムボックスから回復薬を取り出す。
「アードちゃん、これを使ってみてくれる?」
「?」
アードちゃんは、首を横に傾げるだけで、受け取ろうとしない。
「あぁ、これは回復薬だよ。えっと…」
丁度、自分の手首(鉄の腕輪をつけられていた部分)に擦り傷が出来ていた。
「ちょっと、見ててね」
そう言って、アードちゃんに見えるように、その擦り傷に、回復薬を数滴垂らす。擦り傷は、すぐに治る。
「こんな風に、傷が治るんだよ。アードちゃんも、使ってみて」
「ありがと…」
回復薬を再び手渡すと、今度は受け取ってくれる。
「あぁ、アードちゃんの場合、傷が多いから、傷にかけるんじゃなくて、飲んで…」
そう言いきる前に、アードちゃんは、受け取った回復薬を頭からかけていた。
「?」
僕は、苦笑いを浮かべながら、アイテムボックスから大きめの布を取り出す。
「拭くから、こっちにおいで」
「うん…」
少しは、打ち解けれたのか、アードちゃんは近寄ってきてくれた。近寄って気づいたのだが、アードちゃんは、ソフィアよりも身長が小さかった。
「それじゃあ、拭くね」
「うん…」
頭の上に布をかけ、ゆっくりと拭いていく。
「痛くないかい?」
「大丈夫…」
「そっか、良かった。もし痛かったら、言ってね」
「うん…」
頭を拭き終わると、声をかけ腕や足などの怪我が治っているか確認する為、包帯をほどいていく。頭から、かけたせいか腕などかかっていない部分の傷は、治っていなかったので、もう1本取り出し、今度はかけるのではなく、飲んで貰い、しっかりと腕や足・顔などの傷が治ったのを確認する。
「ちゃんと、治っているみたいだね」
「うん… ありがと…」
「どういたしまして。あ、ついでに服も着替えようか? 今のままだと風邪引くかもしれないからね」
僕は、アイテムボックスから、予備の服を取り出しながら、そう伝え、服を手渡す。
「うん…」
アードちゃんは、服を受け取り、僕の目の前で、脱ごうとしたので、そっと後ろをむいておく。
「着替えたよ…」
僕は、むき直る。
怪我を治し、濡れた服も着替え終えたので、
「アードちゃん」
「なに?」
「アードちゃんが、どうしてここにいるのか聞いてもいいかい?」
「うん… あのね…」
アードちゃんは、ゆっくりではあるが、どうしてここにいるのかを教えてくれた。
話をまとめると、どうやらアードちゃんは、お姉さんと暮らしていて、1人で遊んでいる際、見知らぬ人から襲われたみたいだ。怪我もその時負ったみたいだ。
「そっか… 大変だったね…」
「・・・」
僕は、アードちゃんの頭を撫でてあげながら、
「アードちゃん。僕が、必ずもといた場所まで送るから、安心して」
アードちゃんは、こくりと頭を縦に振ってくれる。
「うん… ありがと、お兄ちゃん… お願い…」
「任せて、アードちゃ… !!」
ここの牢屋部屋へと近づく気配を察知する。