121話・召喚?
「僕の名前は、ノーリって言うんだけど、君の名前は何かな?」
そう尋ねてみる。
「…ド アード」
子供は、小さな声でしっかりと自分の名前を答えてくれる。
「アードちゃんかな?」
こくりとわずかにあげた顔を縦に振ってくれる。
どうして、こんな所にいるのか尋ねようとする前に、先にアードちゃんの傷をどうにかする事にした。
アイテムボックスから回復薬を取り出そうかと思ったが、鉄の腕輪をつけられていた事を思い出す。
「聖剣があればな…」
あれさえあれば、鉄の腕輪の鎖部分を斬る事が出来ると思うんだけど、あいつに持っていかれたから、無い物ねだりになってしまう。今なら、力を込めたら鎖くらい壊せるかなと思っていると、
「だ… 大丈夫?」
アードちゃんがそう言い、心配そうな顔で僕を見ていた。
「ありがとう、アードちゃん。だ…」
大丈夫と言おうとした際、僕とアードちゃんの間が突然光だした。
僕は、咄嗟にアードちゃんを背に庇うように動き、光っている部分を見つめる。光が徐々におさまると、
「僕の剣?」
あいつに盗られた筈の僕の剣が、淡い光に包まれた状態で浮いていた。僕は、驚きながらも、(腕輪がついている為)両手をあげ剣を握ると淡い光が消える。この手に馴染む感触… やっぱり、僕の剣で間違いないようだ。聖剣の能力なのかな? こんな能力があるなんて、知らなかった。
「け… 剣?」
アードちゃんがそう聞いてくる。
「あぁ、そうだよ。僕の剣なんだけど、人に盗られたからここにない筈なんだけどね…」
僕は、なんとか鞘から聖剣を引き抜き、床に突き刺す。腕を回し、鎖部分を刀身部分にあて一気に手前に引っ張る。すると、鎖部分が斬れて弾け飛ぶ。
「よしっ」
自由になった手で聖剣を抜き、今度は腕輪部分を慎重に斬っていく。
「凄い…」
腕輪を斬り終わり振り返ると、アードちゃんが驚いていた。
「驚かせてごめんね、アードちゃん」
僕がそう言うと、アードちゃんは、首を横に振ってくれる。
「ありがとう、アードちゃん。それで、回ふ… いや、先に、アードちゃんについてある腕輪を壊したいんだけどいいかな?」
アードちゃんは、少し考えた後、首を縦に振ってくれる。
「ありがとう、アードちゃん。なら、手を前に出して目を閉じていてくれる?」
アードちゃんは、言った通りに手を前に出し、目を閉じる。僕は、切っ先を腕輪部分に当て、自分の時以上に慎重に斬っていく。
無事に斬り終えたので、今度は元々ある傷を癒す為、アイテムボックスから回復薬を取り出す。