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120話・小さな子

 僕たち(試験官と木箱の中の2人)以外にも、近くに人の気配があるので、まだ動かずに、じっとしておく。

 少しして、数人の気配が近づいてくる。たぶん、先程の人たちと残っていた試験生たちだろう。


「それじゃあ、お前ら、こいつらにあれをつけていくぞ」


「「はい」」


 依頼者も、言っていたけど、あれって、なんの事だ?

 考えても、分からないので、とりあえず、じっと待っておく。

 外では、金属の擦れるような音何かがする。


「リーダー」


「なんだ?」


「あれが足りないようですが、どうします?」


 あれが足りない? さっき言っていた僕たちに、つけようとしていた物か?


「残ってるは、誰だ?」


「後は、空箱です」


「そうか… なら、普通の鉄の腕輪でいいぞ。どうせ、そいつは、魔法は使えないだろうしな」


「分かりました」


 そんなやり取りの後、僕が入っている木箱の蓋が開き、僕は、木箱から取り出される。

 取り出された僕は、気づかれないようにうっすら目を開け、周りを確認する。周りには、気配察知通り、試験官たちと試験生たちのみ。奥には、牢屋が何部屋かあり、そこにも人の気配を感じる。

 周りを確認し終えた時には、僕の両手に鉄の腕輪がつけられる。先程の話を踏まえると、たぶん他の試験生たちにつけられている物は、魔法封じの腕輪だと思う。


「よし。それじゃあ、こいつらを言われた通り、1人ずつ牢屋にぶちこむぞ」


「「はい」」


 僕たちは、1人ずつ牢屋に投げ込まれ、外から鍵をかけられる。だけど、何故か僕だけ、隅の方に人の気配がある牢屋に投げ込まれた。


「よし。後は、報酬を貰ってから、ギルドに報告しに行くぞ」


「「はい」」


 試験官たちの気配が遠ざかっていく。

 牢屋に入れられる時に確認した位置と気配察知を照らし合わせると、ここを監視や番をしている人の気配はないな。僕は、体を起こし、牢屋の中を確認する。

 気配察知通り、薄暗い牢屋の隅には、縮こまった状態で誰かが座り込んでいた。

 僕は、ゆっくりと歩みより声をかける。


「君、大丈夫?」


 近づくと、縮こまった人が、緑色の髪の小さな子供だと気づく。

 小さな子供は、ビクッと体を震わせ、更に体を縮こませる。

 僕は、優しく再度声をかける。


「大丈夫かい?」


 子供は、ゆっくりと顔をあげ、僕を見つめる。

 小さな子供は、顔だけでなく、よく見ると至る所に包帯が巻かれており、その包帯には、血が滲んでいた。

 僕は、握った拳に力を込めながら、


「僕の名前は、ノーリって言うんだけど、君の名前は何かな?」


 そう尋ねてみる。

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