117話・捕らわれる
倒れた2人に近寄る反応があったので、思い止まった。ただ、倒れた2人に危害を加えようとするなら、すぐにでも飛び出せるようにしておく。
一応、息を殺しながら耳を澄ます。
「薬が効いたようだな。」
「みたいですね。」
薬… やっぱり、料理に何か入ってたみたいだね。
状態異常回復薬を飲んでおいて、正解だったな。
「それじゃあ、早速始めるぞ!!」
「「おう!!」」
そう言い、試験官たちは、倒れた2人を馬車の方へ連れていく。何をしているかまでは、暗くて良く見えないが、命の危険は今の所無いように見えるかな。
「よし。あいつらも、動けなくなっている筈だから、連れてこい。」
やばっ!!
僕は、急いで横になる。
すると、僕のテントに試験官の1人が入ってきて、僕を抱えあげられ、そのまま馬車へと連れていかれる。
僕は、薄目をしながら様子を伺う。
「よし、詰めろ。」
それを合図に、僕は、馬車内にあった木箱に詰め込まれ、蓋をさせる。
木箱は、他にも何個かあった為、他の試験生たちも木箱に詰め込まれたと思われる。
「それにしても、何で空箱みたいな雑魚がこの試験を受けてんだ?」
「その事なんですが、これを見て下さい、リーダー。」
「ん、なんだ? 剣か… ずいぶん、高そうな剣みたいだが、どうしたんだこれ?」
「空箱が、持ってました。」
「なる程な… この剣のおかげか…」
「それで、リーダー。その剣どうするんすか?」
「これは、俺が預かっておく。」
「ちょっと、リーダーそりゃないでしょ!!」
「安心しろ。その分、今回の俺の取り分をお前にやるから」
「…分かりました」
僕の剣は、あいつが持っていると… 後で取り返さないとな。
「おい、終わったのか?」
ん、この声は、依頼者かな。
「あぁ、終わったよ。」
「なら、テントを処分した後、さっさと出発するぞ。間に合わなくなる。」
「了解。おい、テントを処分してこい。」
「分かりました。」
テントを処分だって… あれ買ったばかりなのにな…
それにしても、依頼者が言っていた間に合わなくなるってどういう事だろうか?
言葉の意味に、頭を悩ませていると、馬車が動き出した。どうやら、どこかへ向けて、出発したようだ。
木箱の中だと、どこへ向かっているか迄は、分からない。それに、今行動を起こすにしても、木箱を壊し、ここから出ないといけない。そうすると、他の試験生たちまで、危険が及ぶかもしれない。流石に、そんな事は、出来ない。
先程までは、起きておくつもりだったけど、出来る事が、殆どないので、僕は、諦めて眠る事にした。