114話・昇格試験 6
それでも、まだ時間があったので、一度冒険者ギルドに顔を出す事にした。
お昼時もあってか、ギルド内の酒場も冒険者たちで賑わっていた。
僕は、マリヤさんにムエルトがどうなったのか、尋ねようと、受付に行こうとした所で、足を止め、酒場のテーブルにいたある人物の元へ行く。
「おう、ノーリ。さっきぶり!!」
僕に気づいたカールさんがそう言ってくる。
「試験官の仕事お疲れ様です、カールさん。」
と返事を返し、
「それで、その顔は、いったいどうしたんですか?」
気になった事について聞いてみる。
カールさんの顔っていうか頬が、先程見たよりも腫れていた。
「あぁ、これな… さっき、お前模擬戦しただろ?」
「カールさんに、無理やりさせられた模擬戦ですね。」
「うっ… そう、それだ。それで、どうやらその模擬戦の件がギルマスまで話が通っていたらしくてな、模擬戦終了後、試験官の報酬を貰いに行ったら、そのまま奥の部屋に案内されて、ギルマスからこってり絞られた結果がこれだ… しかも、報酬も1割減額されちまったよ…」
「まぁ、何というか自業自得ですね…」
「いや、まぁ、それは、そうなんだがな…」
カールさんは、そう言い苦笑いする。
「腫れていた原因は分かりましたけど、回復薬とかで治したりしないんですか?」
「それがな、治したらまた殴るって言われているから、治すに治せないんだよ…」
「そうなんですね…」
僕も、苦笑いするしかなかった。
「それより、ノーリは、ここにいてていいのか?」
「マリヤさんに聞きたい事があるので、それを聞いたら、むかう予定です。」
「そうか。まぁ、頑張れよ!!」
「はい!!」
カールさんと別れた僕は、最初の目的通り、マリヤさんのいる受付へむかい、あいつの状態を確認しておく。
マリヤさん曰く、あいつの骨折は、無事に繋がったようだ。だけど、いくら試験官が許可を出したとはいえ、ムエルトのした事は、試験妨害と判断され、3ヶ月間昇格試験を受ける事が出来なくなり、1ヶ月の間、ギルドが用意する依頼(街のどぶ掃除や誰も受けない低額の依頼)を強制で受けないといけなくなったらしい。
因みに、僕への罰は特になかった。それどころか、ギルドが用意した試験官が迷惑をかけたという事で、カールさんが減額させていた分のお金を迷惑料として渡された。それを受け取った後、待ち合わせ場所へむかった。
◆
僕は、待ち合わせ時間の少し前に、到着する。僕が到着した時には、既に、僕以外の試験生たちは、到着していた。依頼者と試験官の冒険者パーティーは、まだ来ていなかったので、僕を含めた試験生5人で改めて、自己紹介を始める。