111話・昇格試験 3
もう、諦めて部屋を出ていきなよ、ムエルトよ…
僕は、心の中で、そう呟く。
他の不合格者はもう、出ていったよ。
「あいつとは、ノーリ君の事ですか?」
「そうだ!!」
「そうですか… ノーリ君。貴方の点数を教えても宜しいですか?」
「はい、大丈夫です。」
筆記試験は、合否のみで点数は、教えてくれないようなので、僕も気になっていた所だったので、ちょうど良かったりする。
「ありがとうございます。まず、筆記試験の合格点数は100点満点中、半分の50点をとれば通過出来ます。ですが、ムエルトさん!!」
「は… はい!!」
「貴方の点数は、100点満点中13点です。これは、試験参加者の中で、1番低い点数です。」
「うぐっ!!」
ムエルトよ… 僕に難癖つける前に、もう少し勉強しておけよ…
「それに比べ、ノーリ君の点数は、100点満点中100点です。この点数は、文句無しの1番です。ムエルトさん、これから先上位の冒険者を目指すのであれば、力だけでなく知識も身につける事をお勧めします。」
マリヤさんが、とても格好よくみえる。
「クソッ!!」
ムエルトは、何も言い返せないのか、そう言って部屋を出ていった。
それを、マリヤさんは確認し、
「色々ありましたが… 次の説明に、移らせて頂きます。」
次の試験… 試験官との模擬戦の説明を始めた。
模擬戦である程度の実力を認められれば、最終試験に勧めるようだ。
「説明は、以上になります。では、皆さん訓練場へ移動して下さい。」
僕たちは、マリヤさんの指示通り訓練場へと移動した。
◆
訓練場へ移動すると、既に誰かが待っていた。
「お、来たな。俺が次の試験の担当試験官のカールだ。宜しくな!!」
「「「「「宜しくお願いします!!」」」」」
僕たちは、挨拶をする。
カールさんは、ガッチリとした体型のハゲ頭のC級冒険者だ。僕も、何度か顔を合わせた事があり、分け隔てなく接してくれる冒険者の1人だ。
「それじゃあ、模擬戦を始める前に、ノーリ前に出てこい。」
「分かりました。」
何か用かなと、僕は前に出ると、
「お前は、模擬戦は免除になってるから、悪いが待機していてくれ。」
「免除ですか?」
突然そんな事言われても、訳が分からない。
「どうしてか、聞いてもいいですか?」
だから、尋ねてみる。
「ん? そりゃあ、俺も分からん。何でも、ギルマスからの指示のようだぞ?」
グラディウスさんの指示?
特別依頼があるからかな?
「そうですか… 分かりました。なら、端の方で待機しておきます。」
「悪りぃな。それじゃあ、模擬戦を始めるぞ!!」
「「「「はい!!」」」」
こうして、僕抜きの模擬戦が始まった。