106話・実力 2
僕は、木剣を下段に構えたまま、グラディウスさんに突っ込んで行く。
グラディウスさんは、正面から受け止めるつもりなのか、動こうとせず、木剣を構えたままだ。
僕は、俊足スキルを使い、一気にグラディウスさんの懐へ潜り込み、左下から切り上げる。だが、僕の木剣は難なくグラディウスさんに受け止められてしまう。
だけど、初めから当たるとは考えていなかった僕は、木剣を引きつつ、しゃがみこみ、グラディウスさんの足めがけて、払うように蹴りをいれる。
だけど、その蹴りも、グラディウスさんは、軽くジャンプする事によって躱されてしまう。僕は、引いた木剣をジャンプで浮かんだ、グラディウスさんの肩めがけて突きを繰り出す。
この突きは、当たると思ったけど、グラディウスさんは、空中で体を捻る事によって、躱しただけでなくそのまま1回転して木剣を僕めがけて振ってきた。
その木剣は、腕を掠めたが、何とかバックステップで直撃は避けた。
「ハァ… ハァ…」
危なかった…
少しでも、後ろに下がるのが遅れていたら、腕は折れていたかもしれない。
「やっぱり、やるねぇ、ノーリ君。」
着地した、グラディウスさんは、笑いながらそう言ってくる。
「…掠りもしてないのに、そんなこと言われても、お世辞にしか聞こえませんよ、グラディウスさん。」
「そんな事はないよ。結構、ギリギリだったよ。それじゃあ、今度は、私から行くよ!!」
そう言ったかと思うと、グラディウスさんは、すぐ目の前に現れ、木剣を振り下ろしてきた。
僕は、ギリギリの所で木剣を滑り込ませたが、木剣同士が触れる直前に、グラディウスさんの木剣が止まったかと思った時には、衝撃を受けて、後ろへ飛ばされてしまう。受け身を取りすぐに体勢を整えるが、蹴られたお腹がズキズキと痛む。
どうやら、視線を上にむけ、木剣に気をとられた際に、下からの膝蹴りを食らってしまったようだ。
蹴られた事には、気づけたのだが、突然目の前に現れた方法がわからない。
「よく今の一瞬で、後ろに飛び退けたね、ノーリ君。」
「…今のも、ギリギリでしたけどね。それにしても、目の前に、突然現れたあれは、何ですか?」
答えるとは思わないけど、一応気になったので、聞いてみた。
「あぁ、あれは…」
またしても、グラディウスさんご、突然目の前に現れたので、後ろに飛び退く。
「こういう風に、移動する縮地法っていう、スキルだよ。」
「…そうなんですね。でも、どうして教えてくれるんですか?」
「君に期待しているからかな。それじゃあ、次行くよ。」
そう言って、グラディウスさんは、木剣を構える。