105話・実力 1
僕は、グラディウスさんの後について行き、部屋を後にする。
グラディウスさんは、部屋を出てそのまま受付の方へと歩いて行く。てっきり、そこが目的地だと思っていたが、受付のカウンターから出て、その横の外へと続く道を進んでいく。
「グラディウスさん、この先って確か…」
「ノーリ君の思っている通り、この先は、訓練場よ。」
道を抜けるとそこは、広々とした空間で、入り口の横には、木で出来た多種多様な武器を置いている。何でも、訓練場の周りには、特殊な結界を張っており、簡単な魔法を使用しても大丈夫なみたいだ。
僕は、初めてギルドに来た時が初めてで、それ以外は、片手で数えるくらいにしか、ここには来た事がない。何故かと言うと、訓練場で訓練をしようとしたら、使わせて貰えなかったり、使えた時でも、他の冒険者に邪魔をされたりして、ろくに訓練も出来なかったので、それ以降使ってこなかった。
今思えば、あいつが何か手を回していたのかも知れない。
それでも、僕が使用しようとした時には、何人かの冒険者が訓練をしていた筈なのに、今は誰1人いない。
それが、気になったので聞こうとする前に、
「今は、事前にマリヤに言って、ここは立ち入り禁止にして貰っているの。」
「…そうなんですね。でも、何でですか?」
僕がそう尋ねると、グラディウスさんは、返事を返さず、木の武器が置いてある所まで歩き、2本の木剣を手に取り、振り返る。振り返った、グラディウスさんの顔は笑っていた。
グラディウスさんは、ニヤリ顔のまま、木剣を僕にむかって、投げてきた。ここに来た時点で、薄々、何をしたいのか理解しだした僕は、投げられた木剣を掴む。
「そう言えば、ここに来た理由を聞いていたね。簡単な事だよ、ノーリ君。君の実力を見せてほしいから、私と一戦交えないか?」
先程までの、笑顔は消え去り、真剣な顔をしたグラディウスさんが、そう言ってきた。
やっぱりか… と思う反面、あの剣聖と剣を交える事が出来る事が、少し嬉しくもあった。だから、僕は迷わず、
「分かりました!!」
「そうこなくっちゃ!!」
僕たちは、訓練場の中央まで歩いて行き、少し距離をとる。
「ノーリ君。遠慮なく、来ていいからね。」
そう言い、グラディウスさんは、木剣を構える。
「分かりました。胸をお借りします!!」
僕はそう返し、木剣を構える。
「分かったわ。それじゃあ、どこからでもかかってきなさい。」
「では、行きます!!」
僕は、木剣を下段に構えたまま、グラディウスさんに突っ込んで行く。