100話・準備 2
僕は、グラディウスさんに挨拶をして、部屋を出て行く。
戻ると、カウンターの端の方で、ソフィアを発見する。
「お待たせ、ソフィア。」
「あ、お帰り、お兄ちゃん!! お話は、もういいの?」
「あぁ、大丈… ぶ… いや、もうちょっと待ってて。」
「うん!!」
僕は、聞き忘れていた事を思いだし、マリヤさんに尋ねに行く。
「マリヤさん、昇格試験っていつからか分かりますか?」
「…ノーリ君は、ギルマスから、あの話を聞いたわね?」
「はい…」
「それで、ノーリ君は、あれを受けるの?」
どうやら、マリヤさんは、特別依頼の事を知っているようだ。
「はい。受けたいと思います。」
「そう… 何も出来なくて、ごめんね。」
「マリヤさん、そんなに心配しないで下さい。何かあっても、グラディウスさんから貰ったアイテムですぐ逃げますから。」
「…本当に、気をつけてね。」
「はい!!」
「それで、昇格試験の日にちだったわね。昇格試験は、今日から2週間後の予定ね。」
「2週間後ですね。分かりました。」
マリヤさんにも挨拶してからソフィアを連れて、家に帰った。
◆
彼は、無事に依頼を受けてくれた。
「妹か…」
私も、故郷にいる妹の事を思い出す。
「おっと…」
気づけば、握りこぶしから血が滲んでいた。
「こんなんでは、ダメだね…」
私は、思考を切り替える。
「それにしても、本当に彼はいったい何者なんだろうか…」
彼が、出ていった扉を見ながら、先ほどの事を思い返す。
悪いと思いながらも、今回も興味本意で、どのくらい強くなったか鑑定してしまった。だけど、LVよりも気になった事がある。
「上位人族…」
人よりもかなり長く生きている私ですら、聞いた事のない種族だ。
前に鑑定した時は、普通の人族だったのに…
いったい彼に何があったのか…
私は、ますます、彼に興味が湧いてきていた。
「もしかして、彼なら…」
◆
家に帰った僕たちは、お風呂や少し早いが夕食の準備をして、ご飯を済ました。
「ソフィア。僕は、ちょっと下のダンジョンにいるから、何かあったら呼びにきて。」
「お兄ちゃん。私も、一緒に行ってもいい?」
「下のダンジョンにかい?」
「うん!! ダメかな?」
まぁ、危ない事をする訳でもないからいいか。
「別に、いいよ。それじゃあ、一緒に行こうか?」
「うん!!」
僕たちは、一緒に下のダンジョンへ下りていく。