98話・特別依頼の内容
「単刀直入に言うと、ノーリ君。君に、特別依頼を受けて貰いたい。」
グラディウスさんは、真剣な顔でそう言ってきた。
何かあるとは思ったけど、僕が思いもよらない事だった。
「…特別依頼ですか?」
「そうだよ。」
「…何故、僕なんでしょうか?」
「それは、今から話すよ。その前に、昇格試験については知ってるかい?」
「はい。先ほど、マリヤさんから、筆記と試験官との試合。それに、護衛依頼をすると聞きました。」
「ノーリ君の言った通りで、間違いないよ。それで、その護衛依頼で、ちょっと問題があってね…」
「問題ですか? 依頼者が、いないとかですか?」
「いや、違う。依頼者はちゃんといる… それも、ほとんど毎回、昇格試験の時に、依頼を出してくる依頼者がね…」
「…そうなんですね。なら、何が問題なんですか?」
その依頼者に何かあるのかなと思いながら、聞いてみる。
「その依頼者の護衛の際、これまたほぼ毎回、試験を受けている冒険者が夜逃げをするんだよ。」
「試験者がほぼ毎回、夜逃げですか?」
「ギルドには、そう報告があがってるね。」
「その依頼者、完全に怪しいじゃないですか。何でそんな依頼を受けるんですか?」
「私も、気づいたのはここ最近なんだよ。それに、意味もなく依頼を断る事は出来ないんだよね。依頼料もしっかり、払われているみたいだしね。」
「そうなんですね… あれ、でも試験官の冒険者もいるのなら、何も出来ないのではないんですか?」
「ノーリ君の言う通り本来出来ない筈なんだけど、その夜逃げの報告をしてくる冒険者も、毎回同じ冒険者パーティーなんだよね。」
「まさか、その冒険者たちも?」
グラディウスさんは、首を縦に振る。
「私もそう思っている。それで、そのパーティーを調べてもらったら、元サブマスターの息のかかった冒険者なんだよね。」
あいつか…
「なら、その冒険者を捕まえればいいんじゃないんですか?」
「証拠がないんだよ…」
なるほど… て、待てよ
「なら、僕への特別依頼って…」
「その証拠をつかんで欲しいだよ。」
グラディウスさんは、ニヤリと笑いながら、そう言ってきた。
「…冗談ではないんですね。」
グラディウスさんは、無言で首を縦に振る。
「そうですか… 僕以外の人は?」
「高ランクの冒険者が、後を着けると怪しまれ行動しない可能性が高いから、君1人に任せる事になる… ただ、バックアップはさせて貰うつもりだよ。」
グラディウスさんは、そう言いながら、懐から何かを取り出し、机の上に置く。
僕は、机の上に置かれたアイテム?を、鑑定する。