プロローグ
僕の名前は、ノーリ。父さん譲りの金髪・蒼目の10歳。魔法学園に通っているが、魔法はからっきしだ。
父さん、母さん、妹の4人家族だった…
借家暮しのごく普通の生活を送っており、仲は良く、笑顔が絶えなかった。
こんな生活が、いつまでも、続くと思っていた。
だけど、そんな生活が突如して崩れ去ってしまった。
両親がともに、流行り病にかかってしまった。明確な治療法は見つかっておらず、両親はあっという間に衰弱していった。
最後には、涙を流しながら僕に妹を託してから息を引き取っていった。だから、僕は、冒険者になる決意をした。
◇
両親の葬儀も終え、数日がたった。
両親の一緒に住んでいた家を引き払い、僕たち2人は、お母さんの妹の叔母夫婦の家に移り住んでいた。お母さんが、亡くなる前に色々頼んでくれて、引き取られた。
僕はソフィアが寝たのを確認して、音を立てないようにベッドから抜け出し、部屋を出て、叔母さんたちのもとにむかった。丁度2人揃って、まだリビングにいた。
コンッコンッ
リビングに入る前に、ドアをノックする。
「ポリーナさん、ダニールさん、お話があるんですけど、今いいですか?」
「なんだいノーリ、そんなに畏まってから?」
「どうかしたのか、ノーリ君?」
僕は、2人にもとまで近付き、話を切り出した。
「ぼ… 僕、冒険者になろうと思っています。」
「…どういう事だいノーリ?」
ポリーナさんが、尋ねてくる。
「冒険者になって、お金を稼ごうと思います。」
「お金なら、姉さんから、ちゃんと預かってるから、心配しなくてもいいんだよ?」
確かに、両親が亡くなる前に、貯蓄していたお金をポリーナさんに預けていた。
「それは、知ってます…。 だけど、そこまでの額ではなかった筈です。」
「・・・」
「だから、それはソフィアの為に使ってやって下さい。」
「…学園はどうするんだい?」
お金の事には触れず、学園の事について聞いてくる。
確かに、あの学園には通っている。だけど、魔力だけが取り柄で、魔法の才能の無い僕は、昇級試験すら難しいだろう。逆に辞めるタイミングとしては、丁度良かったと思っている。
「…学園は辞めようと思っています。」
「どうし…「ポリーナ」なんだい、あんた?」
口を閉ざしていた、ダニールさんが、口を挟む。ポリーナさんにアイコンタクトをとってから、話し始める。
「ノーリ君。」
「はい。」
「冒険者になっても、必ずお金を稼げる訳ではないことは知ってるね?」
「はい…」
「それでも、学園まで辞めて、冒険者になるのかい?」
「…はい、そのつもりです。」
「そうか…」
ダニールさんは、ジーと僕の目をみてくる。
僕も、目をそらさず、ダニールさんの目をみる。
「分かった…」
「本当ですか!!」
「あぁ。但し条件がある。」
「…条件ですか?」
「決して、無理をしない事。何かあったら、すぐ私たちに頼る事。この2つは絶対条件だよ。守れるなら、ノーリ君の話を受け入れよう。」
「…分かりました。守ります。」
「なら、今日はもう休みなさい。学園の方には、私から話を通しておこう。」
それは、正直助かる。
「はい、ありがとうございます。それでは、おやすみなさい。」
「はい、おやすみ。」
僕は、ソフィアがいる部屋に戻っていった。
◆
ノーリが、部屋に戻ったのを確認してから、話し始める。
「あんた、本当によかったのかい?」
「ノーリ君も、悩んだ末の結論だろう。」
「それは、そうだけど… もし亡くなりでもしたら、私は、姉さんに顔向け出来ないよ。」
「それは、私も一緒だよ。だから、何かあったら、すぐ助けてやろう。」
「そうだね…ノーリも男を見せてるんだし、私たちがとやかく言うのは、野暮ってもんだね。分かった。私も腹をくくるよ。」
「ありがとう、ポリーナ。それじゃあ、私たちも寝るとしようか。」
「えぇ。」
灯りを消し、リビングを後にした。