君の名前は
「はぁ〜、うまくいかねぇ」
トラックの運転手に乗せてもらおうとしても、なかなか承諾が得ず、時間だけが過ぎていた。
『おう、なにしょげてんだ』
目の前にはここまで運んでくれた運転手がいた。
「すみません、ここまで運んでくれたのに」
『そんなこといいってことよ
それよりよ、ツヨシ、なんでも西に行きたいんだって』
「どうして知ってるんですか」
『そりゃ、あんだけ声かけまくってたら、嫌でも耳に入ってくるわ』
「………」
『ったく、しょうがねぇなぁ
俺が送っていってやるよ。俺も西方面に行くからなぁ、これもなにかの縁ってやつだ』
「ありがとうございます。迷惑かけっぱなしで、すみません」
『ったく、はじめからサービスエリアじゃなくて目的地に連れてってくださいって言えばいいのによ』
「いや、でも…迷惑をかけてしまうと思ってしまって」
『はぁ〜、もういい
早く乗れ。出発するぞ』
ツヨシはトラックに乗った。となりに乗ってシートベルトをし、出発した。
正直に言うと、本当は乗りたくなくて違うトラックに乗りたいと思っていた。なぜなら、このコンビニエンスストアの弁当類は俺が勤めていた会社だからだ。嫌な気持ちをしたくないからっということを伝えずというか伝えたくなかったが、ここで断ることもできなかった。
そんなことを思っているとトラックの運転手が声をかけてきた。
『そういりゃ、名前聞いてなかったな
お前、なんていうんだ』
「ツヨシです」
『なんだぁ強そうな名前してるじゃねぇか』
「はい、そうですね。祖父がつけてくれました」
『へえー、そうか
ふつうは親がつけると思うんだがな』
「母は僕を産んだときに死んでしまって……父はそれが影響で、お酒を飲みすぎて急性膵炎っていう病気で死んでしまって……」
『そりゃ、………大変だな…すまん、無粋なこと聞いて』
「いいんですよ、小さすぎて覚えていませんし
なにより僕には祖父がいますから」
『そうか』
申し訳なさそうにしていた
「そういえば、運転手さんはなんていう名……」
『お、見えてきたぞ』
急に興奮した運転手が声をあげ最後まで言えなかった…
『見てみろ左を』
そう言われ左をみてみると素晴らしい景色が広がっていた
「綺麗だ…」
心からそう思えた
朝日と海がマッチした最高の景色だった
どんな美人の人よりも美しく思えた
そんなことを思っていると
運転手が、『そうだろう、そうだろう、
この景色はどんな辛いこともな忘れさせてくれるくらいすげぇだろ』
『俺は、この景色を見たいために運転してるからなぁ』
いくらなんでもそんなわけないだろうと思いながら聞いていると腹がなってしまった
そりゃそうだ昨日から何も食べていないからだ
そんなことを思っていると
『なんだ飯、食ってないのか』
そう言いサンドイッチを渡してくれた
ツヨシはあまりの空腹にサンドイッチをいきよいよく開けてむしりついた
『だいぶ腹が減ってたみたいだなぁ』
と言われみっともなかったがサンドイッチに夢中になっていた
『ほら、このへんでいいか』
「はい、ありがとうございました。迷惑かけっぱなしで」
『いいってことよ、ツヨシも余裕がでてきたら困った人を助けてくれよな』
「はい」
なんてすごい人なんだろうと思いながら運転手と別れた。名前聞いとけばよかったと思いながら道を歩き山を登っていた
おじいちゃんに会うべく山を登り着いた
しかし、目の前に倒れてうずくまっていた祖父がいた
「じいちゃん!」
急いで駆け寄った
「息してない!」
と叫ぶと叩かれた
『嘘を言うな』
おじいちゃんに叩かれたのだ
おじいちゃんは父方の親で親がいなくなってから面倒をみてもらった
「よかった、来てみれば倒れてるんだから心配したよ」
『わしのこと心配なんてせず自分のこと心配しろ。大方、パート辞めて帰ってきたんだろう』
何も言えなくなってしまった
『まったくしょうがねぇなぁ
わしがやってる林業をしろ、それなら困らねだろ』
そういうおじいちゃんの身体が一瞬小さくみえた
・
・
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「風呂のせんしてきたぞ」
と言いながらコタツに入りテレビをつけた
コタツの上には晩飯が用意されていた
「早く食べようぜ」
『まぁ待て、おばあちゃんの写真取ってくるから』
そういって扉を閉めて2階に登った
おばあちゃんは父が亡くなったときにあまりのショックで寝込み亡くなってしまった
もう連絡がとれて家族だと思えるのはおじいちゃんだけになっていた
テレビをしばらくみてまだかと思い2階に行くとおじいちゃんが倒れていた。正真正銘のピンチ
ツヨシは急いで救急車を呼ぼうとしたが、この家には電話がない。自分のスマホも仕事をなくしたときに払えられないので解約したままだったのだ。
急にきたピンチにどうすることもできず混乱し時間だけが過ぎていっていた