分岐点
そう、これはかなり昔の話だ。
俺の名前はツヨシ。
俺は、酒に明け暮れる日々を重ねていた。学生のときは中の上で自称進学校に通っていた。
ゆくゆくは、そこそこの名の知られた大学に行って大学生活を思いっきり遊ぼうと思っていた。が、人生ってのは、思ったとおりにぜんぜんいかなくて、大学受験を失敗してしまった。
それから、数年いろいろあって安いアパートに一人で住みながらパート生活を送っていた。しかし、パートには八木がいる。八木は、何十年も会社にいて、この会社の裏のドンみたいなやつだ。先月も八木の愚痴を言ったやつが辞めさせられたらしい。パートを辞めさすなんて簡単なんだろう。八木が会社の課長と仲がいいからだ。課長に告げ口するだけだからだ。周りのパートから恐れられている。正社員にもだ。椅子に座って仕事をしていない八木が2回手を叩く。
「はやくもってこい」
正社員がコーヒーをくんで急いで持ってくる。
「お、お、お待たせしました!」
若い正社員が怯えながら応えていた。見慣れた光景だった。正社員がパートの八木に媚びをうっているのを。まさに権力者……
ツヨシにとっては関わりのない人だし、誰がやめさせられようがどうでもいいと思っていたある日、悲劇は突然やってきた。
「高卒で新米のくせに仕事ができやがって。調子にのってんじゃねーよ」と言われた。
このときはじめて八木には、ほんとうにひどい奴だと思った。まったくひどい八つ当たりだ。八木がご機嫌ななめにツヨシにはいた。この愚痴を仲間に聞いてほしいと思ったが、周りは俺と関わろうとしなくなっていた。ツヨシと仲がいいと知られたら八木に反感をかって辞めさせられるのだろう。
そして、案の定クビになった。この後、他のところではなかなか雇ってもらえず、私物を売って食いつなげていたがアパートを追い出された。
ツヨシは最低限の私物を持って缶ビールを持ちながら歩いていた。
「クッソ、どうすりゃいいんだよ」
ラストの私物の缶ビールを流し飲んだ。そのまま缶を思いっきり道に投げ捨てた。いきよいよくはねた缶は音をたてながら公園に入っていった。
こんなところに公園なんてあったのかぁと思い、公園に入り、ベンチに転がり、もう暗くなってきたしここで一日を過ごそうと思っていたら、
目の前に若い美女が話しかけてきた。
「大丈夫ですか? こんなところで寒くはないんですか? 帰るところはあるんですか?」
「いや…… 追い出されてな…」
「まぁ、たいへん。よろしかったら助けさせてください。私の家でよかったらどうですか?」
「いや、でも迷惑じゃないのか、年頃の女性の家だなんて…その…危ないと思うし…」
「いえ、困ったときはお互い様ですから。それにそんなことを言う人が危ないことしないと思うので」
そして……
目が覚めた。
あ〜、こんなの夢だってわかってたよ…
でも、もう少し見さしてくれてもいいじゃねーか……ひどい…
寒すぎて起きてしまった。まだ太陽も目を覚ましてないのに…
愚痴を言いながら冷えきった手を暖めながら公園の向かいにあるコンビニに止まっていたトラックを見つけた。運転手に頼んで
サービスエリアまで連れてってもらった。
ツヨシはサービスエリアについた。
「はあ〜、嫌だなあ…」と言いながら片っ端にトラックの運転手に頼み込んだのだった。