第34話 闇の精霊
個人的な事情により短いです。
ブレット達が洞窟を進むと、すぐにその最奥部に着いた。
「祭壇……か?」
王の家のテーブルよりも質の良い木と造りの机の四隅に魔道具らしき炎が灯り、中央に口の広い杯が置かれている。
『ここにいるのか?』
『いるよー。闇の力を感じるよ』
声には出さずにシェンに確認をとる。
そして、精霊の存在が認められたことで更に一歩前に出る。
「シェン、ディーネちゃん、サラちゃん頼む」
自分だけでなく、ペレにも聞かせてやるため、そして、ウンディーネからもなにか意見があるかもしれないと、三体全員にそこにいる精霊の元へ行かせた。
すると、黒い球体状の精霊の姿が露わになった。球体の中では黒い霧のようなものが炎のように揺らめいている。
「お前が"精霊様"か」
「ほう、私の姿が見えるか。いや、この精霊達がそうさせているようだな。私の名はウィスプと、そう呼ぶがいい」
その声は人間の男よりも更に低い声だ。
「ああ。最近可能になってな。直接話せて楽でいい」
元々はシェンを通して会話し、さらにその又聞きの話をペレにするつもりだった。
面倒でもそれしか方法はないはずだった。
「そうだな。お前はブレット、だったか?」
「知っていたのか。そうだ。そして、こっちはペレだ」
魔族の王から聞いたのだろうが、名前を呼ばれるとは思わなかった。肯定するのと合わせてペレを紹介する。
「それで、ブレットは私に何を聞きたい?」
闇の精霊ウィスプは早速話に入る。
「まず聞きてぇのは、「魔族とは何か」だ」
寿命が長いとかいう話ではなく、ブレット同様不老ともいえる魔族にある疑念が湧き始めていた。
ブレットは最初にその質問を選んだ。
「なるほど、重要な話だな。魔族とは、亜人とは何か。それが知りたいのだろう?」
亜人は魔物に近い存在……全く根拠のない話なのだが、火のないところに煙は立たない。
ブレットの中ではそれは亜人に政治的に上に立たれたくない連中が言い出したデタラメ、という考えではあるのだが、今回魔族の王を見てそれを揺さぶられたというのもある。
「やはり……魔族は魔物なのか?」
言いつつチラリとペレの表情を確認すると、ペレも気付き、大丈夫と言うようにコクリと頷いた。
「そうだとも言えるし、そうでないとも言える」
「どういうことですか?」
ペレが思わず声を上げる。やはり気になるようだ。
「魔族達は君たち普通の亜人とは違う。まずはブレットの質問から答えよう」
レアケースである亜人同士のハーフであるペレでも普通、と言い切るウィスプ。その言葉にペレも一旦身を引く。
「聞かせてくれ」
「うむ。魔族は私が生み出した種だ」
「何!?」
「そして、その大元は魔素なのだ。だから原理としては魔物と同じと言える」
「違うところは?」
「知っての通り、お前達と同じように言葉を話すということだ」
意思を持つ、とは言わない。「ただ、それだけだ」とウィスプは続けた。
「何故そんなものを……?」
「なに、神の真似事をしてみようと思ったのだ。失敗に終わったがな」
「神だと!? それに失敗とはどういうことなんだ?」
思いもしなかった単語にブレットも珍しく激しく食い付いた。
「順を追って話そう。まずは前者だ。それはペレの疑問への答えでもある」
「お願いします」
ペレの表情が緊張で強ばる。
「亜人を含めた人間は全て元々は神が創り出したものだ」
「つまり亜人は人として生まれたってことでいいんだな?」
大事なことなので確認を入れる。
「そうだ。ちゃんと意思と自我を持つ。私の生み出した魔族にはそれがなかった」
「それが失敗、か?」
「いや、違う。私が生み出したのは魔物だったのだ」
ブレットが問いかけると、ウィスプは衝撃の事実を言い放つ。
「でも、あの人はどう見ても亜人で魔物には見えませんでしたよ!」
同じ亜人としてペレには認められない一言だった。
「見た目は、確かに亜人だ。だが、彼らは君たちとは違い、確かな魔物の本能が残っている」
「まさか、その為にあの魔法を?」
「ブレットは賢いのだな。よくそんなことまで気付けるものだ」
「ブレット、どういうことですか?」
二人の会話にペレだけが取り残され、説明を求めた。
お読みいただきありがとうございます。
なんとかもとのペースに戻したいのですが、今週はキツそうです。




