表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/53

第17話 魔族 後編

 ブレットの魔族の里へ行ったという発言にグランツだけでなく、ペレとココットも口を押さえて絶句した。


「まぁ、昔の話だ」


「昔って……ブレットさんはおいくつなんですか?」


 ブレットの見た目は三十半ばだ。そんな彼に昔と言われても何歳のころの話なのかと混乱したココットが恐る恐る質問する。


「もう数えてねぇな」


「まさか……ブレットさまは……もしかして『英雄』ブレット様なのですか?」


 ブレットが不死者であることを知っていたペレだけがその答えに辿り着いた。知っていたといっても、ペレも不老とは知らず、そこまで昔から生きているとは思っていなかった。


「そう言われなくなって久しいな。それよりも話を戻そう」


 ブレットが肯定すると、ココットとグランツが今にも泡を吹きそうにガタガタと震え出した。


「悪いな。隠してるつもりはないんだが、言っても誰も信じねぇからな」


 話を戻し損ねて仕方なくフォローを入れる。


「ま、ま、まさかブレット様とは知らず私はとんでもなく失礼を……あわわ……」


 ココットは流石にいつも通りとはいかないようだ。


「なに言ってんだ。お前はいつも通りでいい。俺は単に長く生きてるだけだ。そんな気にすることじゃねぇ」


「だ、だが、貴方が尊敬に値する人物だということには変わりない」


 グランツまで態度を変えてしまう。


「あーあー。今までの俺を見てるだろうが。そんなされたらやりずれぇっての」


「はい。ブレットさまが『英雄』であったとしても、私を救ってくれたブレットさまへの気持ちは変わりません」


 ペレの反応が嬉しく、頭をわしわしと撫でる。


「わ、わかりました。続きをお願いします。ブレットさん」


 その様子を見てココットが意を決したようにいつもの話し方でそう言った。


「ああ。魔族は閉鎖的なやつらだった。魔族の王も特に野心も感じなかったし、外に出ようという意思もないようだった」


 だから魔族が見つかったのは本当にあり得ないと思っていたことだった。


「それと魔族はその里にいる精霊から魔法を授かると言っていた。その中に【催眠(ヒプノシス)】という魔法があると」


 もちろんブレットにその精霊を見ることはできなかったが、魔族の中でその精霊と相性が良い者はその姿を見ることができ、魔法を得る。その一部に【催眠(ヒプノシス)】を習得する者がいるという。

 なのでそれを使える者は本当に少ないのだ。


「【催眠(ヒプノシス)】ですか……もしやそれが!?」


 グランツも言葉こそ硬くなってしまったが、ようやく先程までのように話せるようになった。


「ああ。騎士団や魔導学院の人間を操っている魔法だろう。どの程度操れるのかはわからないが……」


『解除はできるんだよな?』


 シェンに確認する。シェンも一緒に行って話を聞いている。さすがにその精霊がいるという場所には入らせてもらえなかったのでシェンもその精霊を確認していないが。


『うん。これ系のは僕たち精霊が触れれば解除できるよ。僕ならもう掛からないようにもできると思う』


 これ系、というのは精霊から直接授かる魔法のことらしい。

 更にシェンは対【催眠(ヒプノシス)】の処置もできるようだ。


『普通の精霊にはできないのか?』


『解除はできるよ。でもそれだけ。あとはその子の力次第』


『なるほど。院長には精霊が付いてるな?』


『よくわかったね』


 シェンは聞かないとこういうことは教えてくれない。ブレットもさすがに慣れて、そういう性格だと諦めている。


『じゃないと院長に【催眠】が掛けられてない理由がないからな』



「ブレットさま?」


 シェンと会話をしていると、それで黙ったことをペレが不思議に思って声を掛けた。


「ああ悪い。俺の精霊によると【催眠】状態は解除できるらしい。それに【催眠】されない為の加護といえばいいか? それも可能だそうだ」


「いや、もう驚きませんよ!」

「ブレットさまは精霊持ちだったのですね!」


 ブレットがシェンから聞いたことを伝えると、ココットとペレがそれぞれ反応を見せる。



「それにしても……魔族はどうやって出てきたんでしょう?」


 グランツはやや現実逃避気味に話を逸らした。


「それは……コレだな」


 ブレットはココットが収納袋から魔族の遺体と一緒に解放した外套を取り出して見せる。


「これは魔道具だな。魔素を込めると認識阻害がかかるようだ」


「それって普通の魔道具とは違いますね」


 ココットのいう普通の魔道具というのは魔法の使えない者の為のもので、この外套はそれと違い、魔法の素養を持ち、魔素を操作できないと使用できない。


「正に魔族用に作られたものだな。だが、コレは潜入や奇襲には使えるが視認されている状態では効果がないようだ。【疾風】やワイバーンに見つかったのはその為だろう」


 常に魔素を込め続けるというのは不可能だ。だから野営という休息時だった夜は【疾風】に見つかった。


「それでも里の外に出てくることはできた、ということですね」


 ペレも理解したようだ。


「ああ。問題はそれがどれだけいるのかわからないところだな。魔族は能力の高い者ほど角が大きくなる。さっき見たのは……まぁ、たいしたやつじゃない」


「確かに、そんな者だけというのは考えにくいですね」


 ブレットの説明にココットも同調する。




「一先ずこの砦にいる者たちは俺の精霊のシェンに処置をしてもらおうと思う。俺たちは一旦宿に戻るからその間に集めておいてくれ」


 間違いなく生徒たちは【催眠】状態だろうとそちらの解除を優先する。そして、夏季休暇(バカンス)は中止させる。

 その説得も頭が痛くなるが、リオがいればうまくいくかもしれないと期待する。


 そして、グランツには砦の人間に召集をかけてもらう。


「わかり……わかった。すぐに」


 ようやくグランツも言葉遣いも戻りそうだ。

 ブレットはそれに頷き返してペレとココットを伴って宿へと戻った。

お読みいただきありがとうございます。


設定をわかっている自分だと何度読み返してもちゃんと説明できているか……

おかしいところがあれば教えてください。



読んで面白いと思えたら、ブックマークや下の★で評価していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ