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第13話 騎士団への疑惑

 国境に到着した一行だが、ドラギーユ側の門は硬く閉ざされていた。

 流石にこちら側ではワイバーンの出現を把握しているということだろう。


「誰かいるか!? ワイバーンの脅威は去った。ここを開けてくれないか?」


 門に向かってブレットが大声を出すと、ゴゴゴ、と巨大な鉄の門の片側だけが開いた。


「おおっ! 馬車が来たというのは本当だったか!」


 門から全身鎧を纏った男が一人出てきて、目の前の光景に歓喜の声を上げる。


「国境の守備隊だな? 俺はドラギーユ討伐ギルドのマスター、ブレットだ。ここを通るのもだが、状況の説明と確認をしたい。ここの隊長と話をさせてくれねぇか?」


 色々とやることがある。今言った状況の確認、ジギンたちの療養する寝床の確保、ブレット達護衛を含めた学院生たちの入国の許可──書状を渡すだけだが──などだ。


「ああアンタが。俺がここの隊長のグランツだ。こちらとしてもそれはありがたい。一先ず馬車を中へ」


 兜を外してそう名乗った男は、黒髪に若干白髪が混じっていて見た目だけならブレットとそう変わらない年齢に見える。

 隊長自ら出てきたのは警戒の意味もあったようだが、それよりも北側から人が来たということを喜んでいるようだ。


 国境は両国側にそれぞれ門のある砦がある。そして砦同士の間に許可を得てそこに住む者が宿泊や食事を提供する施設があり、本来なら各種商人が露天形式で店を開いているのだが、どう見ても今は機能していない。北側が封鎖されていたからだろう。


 泊まるものはいるようで宿は営業しているようだ。今は大体が南から来て折り返すのだろう。


 ブレットはココットに指示して生徒たちとジギン達を宿に連れて行かせる。リオも一緒だ。

 ペレだけが本人の希望もありブレットに同行した。


 グランツの案内で隊舎の執務室に入った。テーブルを挟んでグランツとブレットがソファーに腰掛け、ブレットの後ろにペレが控える。

 座っていいと言っても聞かなかった。


「それじゃ、先に聞いていいか? あいつらはいつからいたんだ?」


 ブレットが切り出す。


「約二年前、だな。それを聞くということは向こうには知られていなかったのか?」


 グランツの答えは入出国記録が届かなくなった時期と一致する。

 そしてそれを知らなかったことが不思議なようだ。


「ああ、最近ここから人が来てないことがわかってな。それで俺が出張ったってワケだ。異常ってのは問題にならないと気付かねぇのが厄介だ」


「そうか……」


 ブレットの説明に何か納得をするように顎に手を当てる。


「何かあんのか?」


「うむ。我々の異常は国を守る上で見逃せないことだというのはわかるだろう?」


「ああ」


 ブレットはその先も予想がついたが、詳しく聞く為そのまま促す。


「守備隊は当然期間ごとに交代する。それが戻らない、連絡が来ない、そんな状況になったら向こうから動くはずなのだ」


 グランツもなんとか連絡を取ろうとはしたようだ。だが、相手がワイバーンではそれも難しかったのだろう。


「動いているなら情報も持ち帰っているはずだな。それができない──異常だというならなおさらだ。俺のところに話が来ないはずがない」


「そう。つまりそれを握りつぶしているやつがいる。二年もの間な」


「この国は騎士団から守備隊を選抜するんだったよな?」


「そうだ。国を守るべきはずの騎士団が危機を見逃す理由はなんだ? 反乱でも起こそうというのか?」


「っ! また面倒な……」


「また?」


「ああ、実は──」


 ブレットはここに来ることになった流れと、謎の五人組のことを話す。

 これでは調査を依頼するはずだった騎士団には頼れないかもしれない、というのが面倒だと思った理由だ、と説明した。



「ワイバーンの討伐依頼をジュノのギルドに出せればよかったんだが……」


「国を跨ぐ依頼はギルドマスターからの救援依頼しか出せねぇからな」


 でないと武装した者達の入国を許すことになる。今回のような緊急時には不便だが、容易に武力の手引きができることに比べるとどうしても意図的に行える後者の阻止が優先されるのだ。

 今回のブレットたちの入国も事前の連絡をしていないので、学院長とブレットの連名での書状を送って許可が下りるまで待たなければならない。


「さすがギルドマスター、それは理解してくれるか」


 グランツの安堵した言葉に「俺が作った規則だからな」と呟くブレット。


「ん? 何か言ったか?」


「いや」


「それより、ブレットさん。アンタが来てくれたのは僥倖だ。俺がここに来る前、国を立て直すのに協力してくれたのはアンタだって聞いてる。色々と力を貸してほしい」


 グランツはブレットのことをドラギーユ王国に来てからの一年ほどしか知らないが、むしろその一年にやったことを知っているが故に信用しているようだ。

 頭を下げてブレットに協力を仰ぐ。


「今回いるメンバーの何人かは体が治り次第国に戻らせる。その時にお前さんの信頼の置ける者を呼ばせよう」


 ブレットとしても放置はできない。それに投げるつもりだった騎士団が頼れないとなると動かざるを得なかった。


「すまないな。助かる」


「まずはここに呼んで話を聞いてからだ。それまでに俺たちはあのガキ共のお守りを済ませるとしよう」


 それをしてからでも十分間に合う。向こう側でももしかしたらなにか情報が得られるかもしれない。

 そう期待してブレットは話を打ち切った。


「まだ話したいこともあります。許可が下りるまではここへ来てもらっても?」


「ああ。もちろんだ」


 そう言ってその日はブレットとペレも宿へ向かった。

お読みいただきありがとうございます。


書いててこの国大丈夫かなとは思う。



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