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第39回『パロディ』

 パロディは、問題が起こらないように元にする作品を注意して選ぶ必要がありますが、立派なレトリックのひとつです。


 私が、問題の無い元ネタとしてよく使うのは、童話ですね。


 パロディの利点は、説明しなくても読者に伝わるところです。


 ショートショートでは、わざと書かないでおいて、書かなくてもわかるよね?っていうのが重要なファクターのひとつなのですが、パロディは、それをするのに向いているというわけです。


 一番よく見かけるのは、有名なセリフを引用するというものだと思いますが、童話だとセリフが統一されていたりはしないので、シンボリックな構成要素(毒林檎やガラスの靴みたいなもの)を引用することになりますね。


 童話をパロディにするときの注意点はひとつです。ストーリーをなぞってはいけない、ということです。既知のストーリーを見せられる読者にとってはチープな盗作にしか見えません。引用するのは、ワンシーンだけとか、先ほど言ったシンボリックな構成要素だけにするのがポイントですね。


 前にショートショートには4つの基本形があるというエッセイを書いたことがあります。


 これですね。

 https://ncode.syosetu.com/n4184gg/33/



 4つの基本形とは


 ①二つ以上の要素をくっつけている

 ②文章のどこかが欠けている

 ③何かを繰り返している

 ④何かを言い換えている


 この4つです。


 先ほども言いましたが、パロディは、”②文章のどこかが欠けている”をするのに向いています。


 また、童話と別の何かを関連付けて話を作ることになるので、”①二つ以上の要素をくっつけている”ないしは、”④何かを言い換えている”のどちらか、あるいは、両方を使うというのを意識しておくと話を作りやすくなります。


 ただ、童話に出てくるものと共通点のあるものを見つけて、その二つをくっつけるというのは、若干、難易度が高くなりがちかもしれないです。共通点が一つだけだとちょっと繋がりがよわくて、二か所以上の共通点があったほうが良いからです。例えば、ひとつは繋げるためのきっかけに、さらにもうひとつを落ちや伏線に使う、みたいな感じですね。また、繰り返し童話の要素が出てくることで効果を底上げするわけです。まあ、ひとつの童話の中に出てくる構成要素はいっぱいあるので、その中から共通点を探せばいいという意味では見つけられる可能性は上がりますけれどね。


 というわけで、個人的にお薦めなのが、童話の一部を別の物に置き換えてしまう④のやり方の方です。


 これは、元の童話が何かわかれば、原典とどこが違っているのかも読者が自動でみつけて理解してくれるので圧倒的に根回しが楽に済むという利点がひとつあります。


 ただし、先ほども言った通り、ストーリーは使っちゃダメです。つまり、お話の一部を別の物に置き換えたらそれだけでOKというようなものではありません。


 置き換えて童話のパロディを作る場合は、わりとネタが自然に出来てしまうという方法もあります。


 それは、元の童話のままだと、つじつまが合わなくなるような置き換えをしてしまいます。


 例えば、シンデレラを男にしてしまいます。そうすると、連鎖的におかしなことが起こります。ドレスを貰っても嬉しくないとか。それを着させて喜ぶ魔女とか。弟をこき使う姉だと印象がまた変わりますし、相手は王子ではなくて女性になります。


 それらのピースをつなぎ合わせてお話を作って、最後に童話になぞらえて何かひとこと添えたら完成!というわけです。


 この最後に添える一言というのは、最悪、ツッコミでも良いです。欲を言えば、一工夫欲しいですけれどね。


 上記は、童話をベースに話を作っていますが、童話の方は、単なる添え物、みたいな感じの利用方法もします。


 白雪姫やシンデレラなどは、恋愛絡みの話なので、恋愛絡みのエピソードにちょっと添えるとか、恋愛絡みの話に見せかけるミスリードに使って実は違うとか、王子かと見せかけて、まさかそっちの役どころだったのか、とか、何かをにおわせるのに使うわけですね。


 あと、置き換えるのは、面影が残っている程度でほとんど原形をとどめないほど変えてしまっても大丈夫です。


 例えば、ガラスの靴なら、靴じゃなくてもガラス製の物なら何でもOKです。


 ガラスのビーカーなら王水でも解けないとか、そんなネタに使っても大丈夫です。


 元の童話がわかっていれば、読者が自動で補正してくれますからね。


 共通点を探す時も、その程度の共通点で大丈夫です。



 では、実際の例文です。


 まずは童話との共通点を元にくっつけてパロディにしたパターンです。



『シンデレラ』


「うわ、すごい栄養ドリンクの群れ、えっ、なに、24時間戦う気なの?」


「ふっふっふ、ファイトー、一発!」


「あー、なるほど、がけっぷちなのか。」


「ぐすん。」


「まあ、頑張れ、このガラスの小瓶が、こんなにぴったり合う女性は、どこを探しても君だけだよ。」


「いやだぁー、帰えしてー、日付が変わる前に、おうちに帰えしてー!」


「しょうがないなあ、少し手伝ってあげるから。」


「ありがとう、素敵、結婚して!」


「わかった、考えてみる、まずは、君の旦那に相談してみるね。」




 これは、よく見ると、ガラスの小瓶がぴったり、というのと、残業→日付が変わる前におうちに返して、という二か所しか童話との共通点がなく、それもかなりゆるい繋がりしかないのですけれど、タイトルの力も加味して、シンデレラのストーリーを彷彿させます。パロディの場合、この改変されているけれど元ネタがわかる、っていう、その発見を楽しむのが売りなので、むしろゆるいくらいでも良いです。それで、元のシンデレラがラブストーリーなのをミスリードとして利用して、実は違うっていう落ちに持っていく構成になっています。




 次は、童話の一部を置き換えたものです。




『シンデレラ』


「私の彼氏って、お姉ちゃんずにいいように使われてて、だから密かにシンデレラって呼んでるんだよね」


「あらまあ、あんたが王子様になって助けてあげないの?」


「よし、ドレスでも着せるか」


「あんたも、魔女がわだったかあ」




 共通点を使って書いた方は、元々ネタ帳にあった、”日付が変わる前に帰してー”というネタありきで書いたのですが、こっちの置き換えた方は、全くのゼロから書いているというのが一番の違いですね。


 共通点を使って書く方は、ひとつだけだと、ただひとネタ挟んだだけにすぎず、元ネタを彷彿させる印象操作をするには弱いですから、最低、二つくらいは共通点を用意する必要があります。


 一方で、シンデレラを男性に置き換えた方は、そこから派生して起こるおかしなことをパーツとして拾っていくことになるので、半自動的にネタが出来ていきます。


 まあ、それをどうアレンジするかが腕の見せ所ですけれどね。

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