第31回『一体これは・・・』
小説を書いている時に、話題の転換に困ったことはありませんか?
Aという話題から、別のCという話題に転換したいとき、自然な流れにするために、中間としてBという話題をさしはさむ、ということをすると思いますけれど、このBを考えるのがなかなか難しいんですよね。
そんなときに重宝する方法がこちら、”一体、これは・・・”です。
床に散乱する書類束をよけて部屋に踏み入る。
一体、これは・・・
机の上で湯気を立てている料理に目を見張る。
どうですか、全く脈絡のない二つの文章の唐突な話題転換をスムーズに成し遂げてしまっているように見えませんか?
一見、時間経過による視点の移り変わりを描写しているだけに見えますけれど、違う話題に切り替わっていると指摘されると、あっ、と気がつきますよね。
この方法は、指示代名詞の”これ・あれ・それ”を使った文章であれば、”あれは、もしかして”とか、”ちょっとまって、それって・・・”など、場面に合わせたアレンジをして使うことが出来ます。
原理を説明しますね。
指示代名詞が文章に現れると、読者は、その指示代名詞が指し示すものが何かを考えるわけですね。
その場合、直前までの文章から候補を探すことになります。
つまり、この時点では、”一体、これは・・・”は、前の文章とつながっていると一旦は認識されます。
その後、次の文章を読んで、指示代名詞が指し示していたのは、本当はこっちだったとわかります。
一旦は、前の文章の続きだと認識されて、次の文章に移り、通り過ぎてから後ろの文章につながっていたと認識し直されることによって、読者の頭の中でだけでは、文章が途切れている瞬間というのが消滅して、前後とつながっている状態が維持されたまま読まれることになります(実際には、一体、これは・・・の手前で話題がプツリと途切れています)。
その結果、ガラッと話題が変わるような転換がスムーズになされてしまうというわけですね。
コツのひとつとしまして、先ほども言いましたが、”時間経過とともに視線が移り変わるのを描写している”と見せかけるように心がけることですね。
追記
視線意外でも、音とか、匂いとかもむいています。




